超高齢社会に、「治し支える医療」が必要なことは、論を俟たない。しかし、ではどうすればいいのか、といった各論のエビデンスの集積は十分ではないが、最近各分野で活発な研究活動がみられ、これらは健康寿命の延伸という健康・医療戦略会議の一丁目一番地に反映されていくべきと考える。
こんな折、第59回日本老年医学会を主宰した。
閑古鳥が鳴いて、座長と演者だけでの寒い空間だったらいやだなと、朝一番の認知症シンポジウムを覗くと、満席に近い。この企画が例外的に良かったに違いないと、移動して別の会場を伺うと、なんと立ち見が出ている有様。一番地味なガラガラ予想の一般演題の会場もほぼ一杯であった。入場者数は過去最大、基礎、社会、歯科、看護など、老年学会の他の分科会を含めると、名古屋国際会議場だけで1万人を超えた。特に若手の参加者が多いことは予想を超えていた。
名古屋は「最も魅力の乏しい大都市」として有名で、見所は開場まもないレゴランド®以外あまりない。食事は一部に根強いファンはいるものの「名古屋飯」はひつまぶし以外は、天むす、味噌煮込みウドンなど、美味かどうかは議論の余地があろう。そのため、観光気分は少なく会場に多く残ったのかもしれないが、多くの参加者には感謝している。
老年医学は、現在も最も期待されている医療、医学分野である。
フレイルという概念は、Physical, Mental, Cognitive, Socialの各々を冠したFrailtyに区分され、まさに高齢者総合的機能評価(CGA)そのものである。フレイルの表現系は「老年症候群」であり、メタボ、ロコモのあと、超高齢社会の課題を一言で言い切る「フレイル」の診断、悪化予防は、高齢者の「健康増進の10年」といったキャッチフレーズで、老年医学を再生することが期待される。特に今回「加齢とオートファジー」「高齢者医療領域の再生医療」「AI、ロボット活用」「認知症と自動車運転」「エンドオブライフケア」など、今後の技術革新や、社会のあり方に一石を投ずる議論がなされるなど、老年医学が予想外に早く、量的にも質的にもいい転換点に差し掛かっていると実感できた。