学生時代、特に親しかった10人の同級生がいた。柔道部、弓道部、卓球部のメンバーで、ともによく語り、よく遊んだ仲であった。先日久しぶりに温泉に集合したが、全員でも5名であった。5名は既に故人となってしまったのだ。我々は昭和42年の大学入学なので、年齢的には69~70歳で、いわゆる団塊の世代である。1948年の出生数は268万人あまりであり、2011年の調査ではこのうち221万人が生存していたので、82.6%の生存率であったということになる。しかし、その時点で我々10名の生存率は既に50%まで低下していた。
10名の同級生のうち7割が喫煙者であった。そして亡くなった5名はすべて喫煙者であった。もちろん、すべての死因がタバコに関わるものではないが、肺癌や膵癌などの悪性腫瘍や脳血管障害のように、タバコが影響していたと思われる例が多い。生き残った5名のうち、喫煙していた2名はかろうじて生き残っているが、悪性腫瘍や心疾患などの既往がある。
ところで、このところ男性と女性の寿命の差は広がるばかりで、1970年にその差は5.4年であったものが2000年には6.9年まで広がっている。しかし、その後2015年には6.3年と差は小さくなりつつある。日本の古い時代、たとえば1921~1925年の男女の平均寿命をみると、男性で42.06歳、女性で43.2歳と、わずか1年の差しかなかった。近年の男女差の拡大は、男女の喫煙率の差によるものと考えると合点がゆく。
戦後急速に増加してきたタバコ消費と、男性と女性の喫煙率の差が、男性のがん罹患率を高め、男女の寿命の差を押し広げてきたのではないか。我々が大学に入学した頃の男性の喫煙率はおよそ80%で、女性は15%であった。これはいずれも徐々に低下し、2000年には男性53.5%、女性13.7%になり、2015年には男性31%、女性9.6%となっている。つまり、男性の喫煙率の急速な低下が、ようやく男女の寿命の差を縮めはじめたと理解できないであろうか。
もうこれ以上、同級生が消されるのはごめんだ。2020年の東京オリンピックまでに、この世から消されるべきはタバコである。