大会長を務めた第57回日本核医学会学術総会(アジア・オセアニア核医学会2017と同時開催)が、10月5~7日の3日間にわたり、横浜みなとみらいのパシフィコ横浜で開催され、無事終えて任を果たすことができた。放射線医学教室の主任教授を今年度で退官する私にとって、人生の中の1つの大きな区切りであり、正直なところ学会終了後、達成感とともに虚無感を感じている。医学部卒業後41年を経て、自分の専門とする核医学を通して多くの方々と知り合い、ともに核医学の発展に力を注げたことは大変幸せなことであると痛感している。
核医学は放射線医学の中でメジャーな領域とは言い難いが、私と同じように、何故かその魅力に憑りつかれた若い研究医が、わが国でもアジア各国でも誕生し続けている。そのことを実感できる学術総会を終えた今、喜びと誇りを感じている。
私は自分の専門を教室の方々に強要することはしなかったつもりである。しかし、米国のように豊富なスタッフが配備されているわけではないので、放射線診断にしても放射線治療にしても、専門領域の幅が広い放射線医学全般で診療・教育・研究にわたって理想的な運営を行うことは、事実上不可能である。
2001年に現在の放射線医学教室を任されたとき、教室の特徴を出す運営をしようと思い、私が専門とする核医学、特にPET検査を教室運営の基軸としようと考えた。今まで私とともに教室運営に携わってきてくださった教室の方々の中で、正面から核医学を専門にされた方がきわめて多いわけではない。しかしながら、核医学の重要性を理解して頂ける放射線専門医が育成できたのではないか、と感じている。また、教室あるいは診療科を超えて、核医学を上手に利用して頂ける臨床医・研究医の育成に寄与できたのではないか、と自負している。
学生時代を含め、私が医学の道を歩んできた半世紀の中で、放射線医学は診断の分野も治療の分野も大きく発展してきた。医学生時代にはCTもMRIもPETも存在していなかった。また、放射線治療でがんを根治できるなどとは思っていなかった。しかし、今ではCT、MRI、PET検査は当たりまえのように行われ、放射線治療技術の進歩により早期に発見できれば、放射線治療でもがんを根治できる時代になっている。今後も放射線医学の発展は力強く進むであろうし、そのことが患者さんへの福音をもたらすことになることを期待している。