平成29年4月より病院長を拝命した。当院は栃木県北に位置する中規模病院である。都心から離れているため医師の確保が常に課題となっており、病院長として最も頭を悩ませている。
昭和56年に大学を卒業してから一貫して栃木県で仕事をしている。当院には平成20年に赴任したが、それまでの四半世紀は自治医科大学産婦人科に所属し、臨床、研究および医学生の教育に従事していた。産婦人科医師は入職当初も不足していたが、当時は医大・医学部の新設があり、それに伴い医師数も増加し、やがては医師が充足されるから将来は楽になる、と言われ続けてきた。しかしながら、地方の病院にいる私の感覚では、すべての診療科で未だに医師の充足感はない。
国際医療福祉大学では一昨年医学部が新設され、それに伴い当院の医師数が若干増加した。いずれの医師も積極的に病院に貢献しようとする意志が感じられるが、若手が少ないのが実情である。やや高齢であっても救急当直を引き受けてくれているが、翌日の診療を考えると無理はさせられない。初期研修医を含めて若手医師の参入が待たれるが、栃木県北に来てくれる初期研修医は少数である。当院では毎年5名の初期研修医を募集しているが、必ずしも5名の定員を満たすことができない年もある。しかしながら、悲観的なことばかりではない。
当院での初期研修を選択した医師の志は高く、そのため、指導する医師にも自ずと力が入り、その結果、よい師弟関係ができ上がり、何人かはそのまま専門医取得をめざして残っている。将来的には、研究や専門性を高めるため、留学や他の病院や大学院での研修も必要ではあろうが、何年か経って当院に戻り、栃木県北の医療に貢献してくれることを期待する。
「小欲知足」という言葉がある。いろいろな物を欲しがらずに、与えられた現実を素直に受け入れることだが、当院では人手が十分とは言えない現状で、医師をはじめとする職員一同が、まじめに、積極的に仕事をしている。私を含め、職員すべてがこの環境を受け入れながら、さらなる発展に努力することを願う。