(東京都 F)
「身体症状症」(somatic symptom disorder)は,DSM-51)で新設された「身体症状症および関連症候群」(somatic symptom and related disorders)というカテゴリーの中の下位分類の1つです。
「身体症状症」の症状としては,①苦痛や日常生活への支障を伴う身体症状と,②それに対して強い不安を持ったり,実際よりも重篤なものとみなしたり,身体疾患がないことの確認に過度の時間や労力を費やすといった,認知,感情,行動の異常です。いわゆる「不定愁訴」や「医学的に説明できない症状」(medically unexplained physical symptoms:MUPS)とおおむね同様のものを指しますが,たとえ身体疾患があっても,上述の認知,感情,行動の異常を伴う場合は「身体症状症」と診断されます。
発症・増悪は,典型的には,何らかの理由で身体疾患への不安を持つようになった人が,身体に過剰に関心を向けるようになり,些細な身体症状に対し重篤な身体疾患であるといった誤った考えが生じ,さらに不安が高じ,身体への注目が強まってしまうといった過程を経ます。そして,しばしば,「自己が健康であるか」を繰り返し執拗に確認しますが,それによる不安の解消は一時的でしかなく,その結果,確認行為がエスカレートしてしまいます。このように悪循環(とらわれ)に陥っていることが多いのです2)。
よって,病態としては,身体症状への不安が中心ですが,しばしば強迫症状(身体疾患の可能性に関する強迫観念,および身体疾患がないことの確認という強迫行為)を伴います2)。
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