□様々な原因により,尿の産生が著しく低下して1日尿量が100mL以下となった状態が無尿,1日尿量が400mL以下となった状態が乏尿である1)。
□無尿,乏尿の治療を行う上で,その原因となる病態を把握する必要がある。原因により腎前性,腎性,腎後性に大きく分類される。
□無尿,乏尿の状態が継続すると,体内老廃物の排泄が低下して水分・電解質のバランスが崩れ,いわゆる腎不全の状態に陥る2)。
□排尿障害の増悪により尿閉状態となると,無尿や乏尿と同様に腎不全を引き起こす可能性がある。
□腎後性無尿・乏尿は尿閉の場合と同様に泌尿器科的な処置が必要となることが多く,腎前性無尿・乏尿と,腎性無尿・乏尿とは区別して考える必要がある。
□高血圧や糖尿病など腎機能障害を起こしうる全身疾患の既往がないか,前立腺肥大症や前立腺癌,尿路結石などの泌尿器科疾患の既往がないかを聴取する必要がある。
□既往歴として脳卒中や糖尿病,脊髄損傷がある患者は,神経因性膀胱による排尿障害から尿閉をきたすことが多い。
□薬剤服用歴の聴取も重要である。腎毒性を有する薬剤投与の有無を確認する。副交感神経遮断薬や感冒薬,抗精神病薬を内服している患者は薬剤性の排尿障害より尿閉を起こしうることにも注意が必要である。
□無尿や乏尿,排尿障害の中には生命に関わる病態が隠れている可能性もある。意識レベル,血圧,脈拍数,呼吸数,体温,SpO2などのバイタルサインの把握は,緊急度・重症度を判断するためにも欠かせない。
□皮膚の張りや頸静脈怒張,浮腫の有無,体重の変化を確認するとともに,聴診により肺うっ血を示唆する呼吸音の異常の有無を確認しなければならない。
□下腹部の触診にて弾性軟な膨隆を認めることは膀胱内の尿貯留を示唆する所見である。また前立腺肥大症,前立腺癌,急性前立腺炎の鑑別には直腸診も有用である。
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