□両側尿管結石や,周囲からの両側尿管圧迫による両側水腎症のような上部尿路閉塞が原因であり,尿管ステント留置術や経皮的腎瘻造設術のような泌尿器科的ドレナージ処置が必要となるため泌尿器科専門医にコンサルトする。
□腎実質の障害により発症する病態なので,原因により治療法が異なる。溢水による肺水腫,高カリウム血症を伴う場合には直ちに血液透析が必要となることもあり,腎臓専門医へのコンサルトが必要である。
□循環血漿量不足による腎血流低下が原因であり,水分や電解質を補給する輸液を行う。
□ショック状態であれば,電解質等の結果が出る前でも細胞外液または生理食塩水を急速に輸液してバイタルの安定を図ることが最優先される。
□循環不全の原因として大量出血や外傷が考えられる場合には輸血を考慮する。
□排尿障害からの尿閉であれば,尿道留置カテーテル挿入により解除される。
□無尿,乏尿と排尿障害による尿閉では処置や治療がまったく異なるため,最初に鑑別を行う必要がある。
□無尿や乏尿,排尿障害の鑑別は病歴聴取や身体所見,超音波検査などにより非専門医でも比較的容易に行うことができる(図)。
□腹部超音波:非侵襲的かつ簡便に実施可能で,水腎症や膀胱内の尿貯留の有無を確認することができる。
□CT:腎尿路系の病態をより総合的に把握することが可能で原因の鑑別にも有用である。ただし無尿や乏尿,排尿障害を有する患者は腎機能障害を伴っていることが多いため,CT検査時に造影剤を使用するべきかの判断は慎重に行う必要がある。
□腹部X線(kidney ureter bladder:KUB):尿路結石の有無を確認できるが,X線透過性の尿路結石も少なくないため,判断には注意が必要である。
□血液検査にて貧血や腎機能障害(BUN,Cr,K上昇)の有無を確認することができる。また腎前性無尿・乏尿では血液濃縮を示唆するHbやHtの上昇を認める。
□血尿や膿尿の有無を確認できる。また腎前性無尿・乏尿では高浸透圧尿や尿中Na濃度の低下を認める。
□尿閉患者で,カテーテル挿入困難の場合に尿道留置カテーテルにスタイレットを挿入の上,留置を試みる方法がある。経験の少ない者が行うと医原的尿道損傷をきたし,その後の処置を困難にすることがあるため,泌尿器科専門医にコンサルトするべきである。
□腎後性無尿・乏尿や腎性無尿・乏尿に伴う高カリウム血症は,致死的な不整脈を発症し,突然の心停止を起こしうるため,心電図モニターを装着し,心電図波形の変化がないか注意する。
□腎前性無尿・乏尿に対する利尿薬の投与は,有効循環血漿量を低下させ病態を悪化させる。
□腎後性無尿・乏尿,腎性無尿・乏尿に対する過度な輸液負荷は肺水腫を増悪させ,Kを含む輸液の投与は高カリウム血症を増悪させる。
□無尿,乏尿および排尿障害による尿閉はいずれも放置されると腎不全に陥る病態であり,原因の除去をせず帰宅させることはできない。
□下部尿路閉塞による尿閉の診断が明らかであり尿閉状態が解除された場合には帰宅も可能と考えるが,発熱や全身状態より尿路感染症の併発が考えられる患者は入院治療の適応となる。
□無尿と乏尿は腎後性,腎性,腎前性にかかわらず,軽症の場合を除き基本的に入院治療が必要となる。
1) Klahr S:N Engl J Med. 1998;338(10):671-5.
2) Thadhani R:N Engl J Med. 1996;334(22):1448-60.
▶ 日本泌尿器科学会, 編:前立腺肥大症診療ガイドライン. リッチヒルメディカル, 2011.
[http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0014/G0000310/0001]
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