□急性下痢症は,大腸型と小腸型で分類すると治療方針が立てやすい。
□高齢者は容易に脱水に陥る。重症脱水の所見があれば,速やかに細胞外液補充液の輸液を行う。
□発熱,腹痛,血便があり炎症性の細菌性腸炎が疑われる場合に抗菌化学療法を検討する。
□大腸型か小腸型で分類すると理解しやすい。大腸型は腸管粘膜障害型であり,炎症性・侵襲性の大腸粘膜破壊により粘血便,しぶり腹,発熱,腹痛をきたす。一方,小腸型は毒素による腸管分泌促進型であり,多量の水様便をきたすが,組織破壊を伴わないため発熱・腹痛はないか,あっても軽度である。小腸型のうち,嘔気・嘔吐の上部消化管症状が強いものが急性胃腸炎型となる。また,大腸型と小腸型の両方の特徴を呈するのが混合型である。鑑別のポイントと主な病原微生物を表1に示す。
□摂取した食品と発症までの時間は,病原微生物の推定に有用である。病原微生物とその潜伏期,主な原因食品を表2に示す。
□便の回数としては1回のみでも,軟便を下痢だと訴える患者もいる。1日3回以上の軟便・水様便が下痢であり,それがあるかどうかをまず確認する。
□便の性状:血便か水様便かを聴取する。血便・粘血便は炎症性の細菌性腸炎を示唆する。
□発熱・腹痛:高熱や強い腹痛は炎症性の細菌性腸炎を示唆する。
□嘔気・嘔吐:嘔気・嘔吐のみで,下痢がないときは急性胃腸炎と判断しない。
□継続期間:急性下痢症の多くは感染性下痢症であるが,慢性下痢症(1カ月以上持続)では非感染性の原因を疑う。
□発症前に摂取した食事や,その摂取から発症までの時間,また集団発生があるかを聴取する(表2)。
□内服薬:薬剤性の下痢の可能性を考える。最近の抗菌薬投与があれば,偽膜性腸炎を疑う。
□海外渡航歴:特に発展途上国への最近の渡航歴があれば,旅行者下痢症を疑う。
□セクシャリティ:男性同性愛者では,HIV感染症,ジアルジア症,赤痢アメーバなどが鑑別に挙がる。
□頻脈,頻呼吸,血圧低下(ショック),発熱など,重症脱水や敗血症の可能性を示唆する所見の有無を評価する。
□口腔粘膜乾燥や皮膚ツルゴールの低下など脱水所見の有無と,圧痛,反跳痛,筋性防御などの腹膜刺激症状の有無といった腹部所見が重要である。
□血便や粘血便の訴えがあれば,直腸診を行う。
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