□基本的には外来管理が可能で,約80%以上の症例で良好な経過をたどる。ウイルス性の場合が多く,非特異的な消炎鎮痛薬で対処するのが一般的である。
□表2の重症化リスクファクターを1つでも有する場合,ウイルス性や特発性以外の原因が疑われ,入院の上厳重な管理を要する(図)2)。
□NSAIDsアレルギーや最近の消化性潰瘍・出血の既往があるとき,NSAIDsの使用は控える。
□特発性またはウイルス性心膜炎の場合,NSAIDsとコルヒチンの併用療法を行う。無効の場合,さらにステロイドを併用する。再発例では免疫抑制薬(アザチオプリン),免疫グロブリン製剤,インターロイキン1β受容体拮抗薬の使用も考慮する。
□ウイルス性以外の特定原因が判明した場合は,原疾患に応じた治療を行う。
□多くの症例では,薬物療法のみで治療可能であるが,心嚢液が多量に存在する場合,血行動態不安定な場合,細菌性または腫瘍性の場合,収縮性心膜炎を呈している場合などは心嚢ドレナージや心膜切開術などの侵襲的治療法を検討する。
□激しい運動は心膜炎持続・再燃のリスクとなる。下記の運動制限が勧められる。
・症状改善およびCRP正常化までは,なるべく安静を心がける(坐位中心の生活)。
・非競技スポーツ活動は,症状改善や検査データ正常化までは控える。
・競技スポーツは,症状改善および検査データ(心電図,CRPなど)正常化後でも,少なくとも発症から3カ月間は避ける。トレーニングや競技再開前には再評価を受ける。
・心筋炎合併例では少なくとも発症から6カ月間は競技スポーツへの参加は避ける。
□ウイルス性または特発性と考えられる症例の約70~80%はNSAIDsのみの治療で有効である。
□下記の禁忌がない限り,全症例に症状改善まで使用する。
□通常2週間以内に症状は改善し,CRPも正常化する。NSAIDsは症状緩和作用のみで病期を短縮する効果はないと考えられている。
□症状およびCRPなどを指標に,通常2週間以内に減量する。
□NSAIDs使用後1週間で症状が軽快しない場合,自己免疫性や結核性などが原因として考えられる。
□急性心筋梗塞後,早期の症候性心膜炎にはアスピリン使用が好まれる。
□重症例では,治療開始期にNSAIDsの経静脈投与も有効である。
□いずれの処方でも消化性潰瘍予防薬を併用する。特に消化性潰瘍既往患者,65歳以上の高齢者,抗凝固薬服用患者では注意を要する。プロトンポンプ阻害薬が勧められる。
□以下の場合はNSAIDsが禁忌となる。
・NSAIDsアレルギー
・最近の消化性潰瘍または消化管出血の既往
・経口抗凝固薬治療中で出血リスクが高いと考えられる症例
□コルヒチンの併用は心膜炎再燃のリスクを約50%低下させるため,心膜炎の標準的治療としてNSAIDsと併用される。投与は3カ月間継続し,その後減量する。以下の場合は,初期投与量を減量,もしくは使用を控える。
・70歳以上の高齢者:半量に減量
・クレアチニンクリアランス10~34mL/minの腎機能障害患者:通常量を隔日投与
・クレアチニンクリアランス<10mL/minの重度腎機能障害および重度肝機能障害患者:使用を避ける
□第一選択薬ではなく,以下の場合に使用が考慮される。NSAIDs無効例ではNSAIDs,コルヒチン,ステロイドの3剤を併用する。
・NSAIDs禁忌例および無効例
・自己免疫性心膜炎
・透析で改善しない尿毒症性心膜炎
□NSAIDs,コルヒチン,ステロイドの3剤を併用している場合は,1剤ずつ減量し,コルヒチンを最後まで続ける。
□以下のときには,侵襲的治療を考慮する。
・中等度から高度の心嚢液貯留を伴い,血行動態不安定で心タンポナーデを呈する場合
・腫瘍性または細菌性心膜炎で中等度から高度の心嚢液を伴う場合
・頻繁に再発し,心嚢液を伴う場合
・収縮性心膜炎を呈する場合
□廃液量が20~30mL/日以下になるまで数日間は継続する。
□薬物治療抵抗性で再発を繰り返す場合,または心タンポナーデを繰り返す場合に考慮される。
□標準的治療を行うが,コルヒチンの投与量は半量に減量する。消化性潰瘍の合併に留意する。
□基本的に外来治療可能な疾患であるが,重症化リスクファクターなどの徴候が認められた場合,早期に受診するよう説明しておく。
1) Brady WJ, et al:Am J Emerg Med. 2001;19(1):25-8.
2) Adler Y, et al:Eur Heart J. 2015;36(42):2921-64.
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