□感染症や自己免疫疾患により生じる心膜(心外膜)の炎症,およびそれに伴う諸症状。
□胸痛患者の約1~5%を占め,16~65歳の男性で発症頻度が高いとされる1)。
□主な原因は表1のように挙げられる。ウイルス性や自己免疫性,肺高血圧や心不全に伴うものが多い。
□大多数が胸痛を呈する。虚血性心疾患でみられる胸部絞扼感・圧迫感は非典型的であり,前胸部に突然の鋭い疼痛として発症する。
□背部僧帽筋への放散痛を呈することもあり,通常は坐位で緩和,仰臥位で増悪する。呼吸困難,発熱や関節リウマチ・SLEなどの全身検索で診断されることもある。
□前駆症状として感冒様症状や自己免疫疾患,悪性疾患を疑わせるものを伴う。ウイルス性が最多の原因であり,良好な経過をたどることが多いため,後述する重症化指標がない限り,積極的な原因検索は基本的に必須ではない。
□大部分は良好な経過をたどる。
□腫瘍性,結核性を含む細菌性心膜炎の場合,心タンポナーデを併発することがある。
□特発性またはウイルス性急性心膜炎の1%未満,自己免疫性および腫瘍性の約2~5%,結核性や細菌性の約20~30%で収縮性心膜炎を呈する。コルヒチンを使用しない場合,急性心膜炎の約15~30%で持続性もしくは再発性心膜炎を呈する。
□約30%の症例において,聴診所見で胸骨左縁を中心に心膜摩擦音を聴取する。
□心電図では,約60%に広範囲(通常aVrを除くすべて)の誘導でST上昇が認められる。PR部分の低下を認める症例もある。
□心エコーでは約60%の症例に心嚢液貯留が認められる。
□血液検査では,白血球や赤血球沈降速度(erythrocyte sedimentation rate:ESR),およびCRPの軽度高値が認められ,病勢や治療効果の指標となる。
□炎症が心筋へ波及すると,CKやトロポニンなど心筋傷害マーカーが上昇する。胸部X線は心嚢液が300mLを超えない限り,正常範囲のことが多い。
□急性心膜炎:下記主要4項目のうち,2つ以上を満たすもの。
・主要項目:①前胸部疼痛,②心膜摩擦音,③心電図広範囲誘導でのST上昇またはPR低下,④心嚢液貯留。
・副次項目:①炎症反応高値(CRP,ESR,白血球数),②CT/MRIでの心膜炎症所見。
□持続性心膜炎:4~6週間以上症状が持続する心膜炎。
□慢性心膜炎:3カ月以上持続する心膜炎。
□再発性心膜炎:軽快後4~6週以上経過して再発する心膜炎。
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