□大動脈解離とは"大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し,動脈走行に沿ってある長さを持ち二腔になった状態"であり,大動脈壁内に血流,もしくは血腫が存在する動的な病態である。3人/10万人/年の発症頻度である1)。
□6割が緊急手術の必要なStanford A型,4割が保存的治療の適応となるB型と言われている。
□大動脈解離は,発症直後から経時的な変化を起こすために動的な病態を呈する。また,広範囲の血管に病変が伸展するため種々の病態を示す。病態にかかわらず共通する症状は疼痛(胸部・背部・腰部)である。
□さらに血管の状態を,拡張,破裂,狭窄または閉塞,とわけ,さらに解離の生じている部位との組み合わせでとらえると,多様な病態を理解しやすい。
□臨床治療に応用する分類はStanfordの2型(A,B型)分類とDeBakeyの3型(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型)分類がある(図)。
□拡張では①大動脈弁閉鎖不全,②瘤形成がある。
□破裂では①心タンポナーデ,②胸腔内や他部位への出血がある。
□分枝動脈の狭窄・閉塞による末梢循環障害では①狭心症,心筋梗塞,②脳虚血,③上肢虚血,④対麻痺,⑤腸管虚血,⑥腎不全,⑦下肢虚血がある。
□そのほかの病態では①播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC),②胸水貯留,③全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)がある。
□CTは解離の診断に関して信頼度の高い非侵襲的検査法であり,客観的に全大動脈を評価できること,さらに緊急に対応して短時間で検査可能なことから,大動脈解離の診断に必要不可欠な検査法と言える。単純CTでは,内膜の石灰化の偏位,解離部のCT値の上昇などが診断のポイントとなる。
□エコー検査も非常に有用である。特に体表エコー検査は非侵襲的で簡便に解離の診断が可能なだけでなく,分枝の解離の有無,あるいは解離に伴う合併症の評価もできる。Stanford A型の合併症である心タンポナーデ,大動脈弁逆流・分枝への解離の進行や血流状態・心機能を評価しておくことは非常に重要である。
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