右脚ブロックは心電図で認められる異常所見のひとつであり,左脚ブロックに比べ心臓に基礎疾患がないことが多く,無症状で,かつ肺性心,先天性心疾患,Brugada症候群,不整脈原性右室心筋症の除外が行われれば,一般的に予後良好であり精査・治療は不要である。
わが国の報告では1~2%の頻度で認められるとされているが,加齢により頻度は4~8%に上昇することが知られている。右脚が遅れて興奮するため,右室の興奮は左室の興奮に遅れて生じる。典型的な心電図所見は,胸部V1誘導でのrsR’パターンで,QRS幅が120ms未満の不完全右脚ブロック(右脚の末梢のブロック)と120ms以上の完全右脚ブロック(より中枢側のブロック)にわけられる。I,aVl,V5,V6にS波を伴い,V1-2(3)に二次的なST-T変化を伴うことが多い。
電気軸は正常であるが,左軸偏位や右軸偏位が認められた場合は,それぞれ左脚前枝ブロック,左脚後枝ブロックの合併が考えられ,2枝ブロックの存在が疑われる。2枝ブロックにI度房室ブロック(PQ時間が200ms以上)を伴うものを3枝ブロックと呼び,広範囲に刺激伝導系障害が存在することが考えられる。2枝,3枝ブロックで失神を伴う場合,発作性房室ブロックの合併が疑われるため,病歴聴取は大変重要である。右脚ブロックと左脚ブロックを交互に認めるものを交代性脚ブロックと呼び,完全房室ブロック移行のハイリスクである。
右脚ブロックの多くは先天的である場合が多いが,右室負荷によって二次的に生じた可能性を除外する必要がある。したがって左右短絡疾患などの先天性心疾患や,急性肺塞栓などによる肺性心による急性右心負荷の有無,また不整脈原性右室心筋症の有無をチェックする必要がある。Brugada症候群は,右側胸部誘導のST上昇と心室細動を特徴とする疾患であるが,進行例では右脚ブロックを呈することがある。Brugada症候群が疑われる症例では上位肋間記録を併せて行い,Brugada症候群様のtype1波形(coved型ST変化)がないかを確認する必要がある。
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