□大動脈弓部遠位に狭窄を有する疾患で,上半身高血圧や腹部臓器・下肢への虚血性障害を生じる。
□狭窄単独の単純型大動脈縮窄症と他の先天性心疾患を合併した複雑型大動脈縮窄症に分類される。
□本稿では,単純型および複雑型において最も頻度の高い,心室中隔欠損症を合併した症例について述べる。
□若年者の高血圧では本疾患を疑う。上肢の高血圧が特徴であり,下肢ではむしろ低血圧で脈の触知は不良である。
□狭窄が高度である場合,後負荷不整合から左室拡張末期圧の上昇,そして左房圧の上昇に至り,乳児期より肺うっ血・肺高血圧を呈する。乳児期発症の拡張型心筋症と診断されることもある。この場合,上肢は必ずしも高血圧を呈さない。
□乳児期発症例では,胸部X線は非特異的であるが,状態に応じて心拡大および左房拡大を呈する。心電図は両室肥大所見となる。心臓超音波検査が初期診断には有効で,胸骨上窩からの断面で大動脈弓の狭窄部位が描出できる。CT・MRIといった画像診断も有用である。
□乳児期以降発症例においては,上肢高血圧が特徴であり,足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index:ABI)が診断および経過観察に有用である。
□胸部X線では大動脈弓に"3の字サイン"と呼ばれる狭窄像を認めることがある。また,下半身への側副血管として肋間動脈が発達・拡大し肋骨下部の骨膜肥厚を伴った侵食像(rib notching)を呈することがある。心臓超音波検査・CT・MRIといった画像診断が有用であることは乳児期発症例と同様である。
□出生後早期より下記のような症状を呈する。
□左室からの駆出抵抗が大きく,心室間の左右短絡が増加する。動脈管が開存している間は肺動脈─動脈管─下行大動脈経由(pulmonary-ductus-descending aorta trunk:PDDT)で腹部臓器・下肢の血流は維持されるため,下肢脈は良好に触知し,肺血流増加による呼吸症状が前面に出る。しかし,動脈管の閉鎖に伴い,腹部臓器・下肢の血流は遮断され,ductal shockと呼ばれる循環不全を生じる。
□動脈管が開存している間は下肢脈を触知するものの,下肢への血流は静脈血が混合しているために酸素飽和度が上肢に比較すると低い(differential cyanosis)。肺血管抵抗の低下に伴い肺血流が増加すると下肢の酸素飽和度は上昇し差が目立たなくなるが,それにつれて呼吸症状は増悪する。胸部X線では心拡大および肺うっ血を呈し,心電図では両室肥大を呈する。画像診断が重要なのは単純型と同様である。
□動脈管が閉鎖しductal shockを呈すると無尿となり,血液生化学検査上,重篤な腎機能障害・肝機能障害を呈する。
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