□A型肝炎は(hepatitis A),A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus:HAV)の経口感染により引き起こされる急性肝炎である。
□わが国では,HAV高浸淫地域への渡航後の発症や牡蠣の生食後の発症など散発例がみられる。
□一度感染すると,終生免疫が成立する疾患である。
□わが国では,第二次世界大戦の終戦以前に出生した世代で100%近いHAV抗体陽性率を示す。戦後生まれの世代ではHAV抗体陽性率は10%に満たない1)。
□一般的に予後は良好であるが,稀に重症化・劇症化例も認められる。
□2003年11月の感染症法改正に伴い,単独疾患として4類感染症に分類されている。無症状病原体保有者を含む全診断症例の届出が義務づけられており,診断後直ちに保健所へ届出しなくてはならない。
□潜伏期間は約2~6週間である。
□約70%において,38℃以上の発熱を前駆症状として発症する(表)。
□食欲不振,全身倦怠感などの非特異的症状出現後に黄疸を呈し,成人では40~70%に認められる。
□黄疸消失までは平均3週間程度である。
□AST,ALT,LDHが著明に上昇する。初期はAST優位であるが,その後にALT優位となる。
□AST,ALTの上昇に引き続いてT-Bilが上昇する。
□ZTT,IgMの上昇が特徴的であり,診断の補助となる。
□確定診断は血中IgM型HA抗体の検出であり,発症後2週間前後で抗体価はピークとなる。また3~6カ月の間に陰性化する(図)。
□IgG型HA抗体はIgM型抗体に遅れて陽性となり,数十年にわたって持続陽性となる。そのため,既往感染の診断や終生免疫獲得の確認にも用いられる。
□発症前の潜伏期から血液・糞便には多量のウイルスが排泄されており,潜伏期においても感染は拡大する。
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