□原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC)は,原因不明の肝内胆管上皮細胞の破壊により慢性肝内胆汁うっ滞が生じ,その結果最終的に胆汁性肝硬変に至る疾患である。
□病因には自己免疫機序の関与が推定されているが,一般の免疫抑制療法は予後を改善しない。現在では無症候性の患者が多くを占め,この集団の予後は悪くはない。
□一方,症候性のPBC患者は進行性で予後不良であり,肝移植のみが救命手段となる。
□本疾患は,原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)と呼ばれていたが,多くの患者は肝硬変に至らないため,原発性胆汁性胆管炎に病名が変更された。
□現在診断される例の7~8割は何の症状もない無症候性のPBCであるとされる(asymptomatic PBC:a-PBC)。
□この疾患が一般診療に認識されるまでの時代は,診断例の多くが症候性のPBCであり,とりわけ難治性のかゆみが先行し,ついで黄疸が出現する例が典型的とされた。そのため,有症状のPBCをsymptomatic PBC(s-PBC)とし,症状がかゆみのみである例をs1-PBC,黄疸が出現している例をs2-PBCとする。
□慢性の胆汁うっ滞による骨粗鬆症や,シェーグレン症候群,慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患を合併し,これらの症状が前面に出ている例もある。
□PBCでは慢性胆汁うっ滞が生じているために,一般の肝機能検査ではγ-GTPやALPといった胆道系酵素の上昇を認める。胆汁うっ滞のため,総コレステロールなども肝硬変期にならない限り上昇している。また,胆汁うっ滞による肝実質障害のためトランスアミナーゼも上昇する。これらが長期にわたり肝硬変に至ると,血清ビリルビンの上昇,肝合性能の低下によるアルブミンの低下,コレステロールの低下や血小板の低下を認めるが,これはかなり進行した病期である。
□一方,臨床検査で特徴的なのは,自己抗体である抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial antibody:AMA)がPBCの90%以上で陽性となることである。また,血清イムノグロブリンのうちIgMが上昇する。特に,前者は疾患特異性が高い検査所見として知られている。
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