□脾嚢胞(splenic cyst)は稀な疾患であるが,画像診断の進歩により無症状で偶然に発見される例が増加している(剖検例で約0.07%)。代表的な分類は表1~3に示した。大きく真性嚢胞と仮性嚢胞に分類される。
□非寄生虫性と寄生虫性(主にエキノコックス)に分類し,さらに非寄生虫性嚢胞を成因別に分類(表2)した報告もある。
□男女差はなく,小児・若年成人に多い。わが国では寄生虫性嚢胞や悪性の報告例はない。
□通常は無症状であるが,左上腹部痛(約40%),腹部腫瘤触知(約15%),悪心・嘔吐(約9%),腹部違和感,左肩への放散痛などがある。
□頻度は低いが,横隔膜挙上による呼吸困難・頻脈,腎動脈・尿管の圧迫による高血圧,蛋白尿,背部痛等も報告例がある。
□画像検査で嚢胞成分の確認が第一となる。出血の有無,血管腫等の鑑別のため,禁忌等がなければ造影検査が望ましい。
□超音波:低エコーを認める。
□単純CT:低信号を認める。
□MRI:T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を認める。多くは単房性であるが,真性嚢胞では多房性が占める割合が比較的多い(リンパ管腫,血管腫など約半数)。嚢胞内出血や感染を伴うと所見が変化する。
□石灰化を伴う場合もあり(仮性嚢胞>真性嚢胞),寄生虫型では内部に隔壁を有する。
□血液検査:特徴的な所見はないが,真性嚢胞の中にはCA19-9を産生する腫瘍があり血清CA19-9が高値を示すことがある。ほかにも,CEAやCA125の上昇がみられる場合がある。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより