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脾腫

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-18
阪上順一 (京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室講師)
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  • ■疾患メモ

    脾腫(splenomegaly)をきたす疾患のうち,脾臓そのものによる疾患は稀である()。そのため,原病として炎症性疾患,門脈圧亢進をきたす疾患,血液疾患,悪性疾患などを考慮した全身検索を行い,原病に対する治療を優先する場合が多い。

    06_32_脾腫

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    軽度から中等度の脾腫では症状を呈することはない。健常成人における脾臓の大きさは12×7×4cm程度で,重さ100~130gと考えられている。正常の約3倍に腫大すると腹壁から触知できるようになり,左季肋部違和感や食思不振などの症状が現れる。

    悪性疾患や溶血性貧血などで腫大のスピードが速いと左季肋部痛が生じる場合がある。脾梗塞を合併すれば,障害を受けた漿膜部位の疼痛や脾臓の摩擦音が認められる。うっ血性脾腫を示唆する上腹部および脾臓の雑音が聴取されることがある。

    ただし,脾腫症例に現れる症状は脾腫そのものによる症状であることは少なく,基礎疾患に由来するものであることがほとんどである。

    【検査所見】

    血液検査:腫大した脾臓による捕捉により血球減少がみられる。赤血球形態・赤血球寿命は一般に正常である。肋弓下2cmの脾腫大につき,ヘモグロビン濃度は1g/dL低下する。白血球減少は原病,寿命減少や捕捉増加による。脾腫に伴い全血小板の50~90%が捕捉される。

    超音波:画像診断は経腹超音波診断が第一選択である。判定法は,長径×短径であらわすspleen indexがあり,>40cm2で脾腫とすることが多い。簡易的には,目測で左腎との大きさを比べ,同等以下ならば脾腫はないと考えてよい。2014年4月に上梓された腹部超音波検診判定マニュアル(人間ドック学会,消化器がん検診学会,超音波医学会,3学会共通)では,脾臓の最大径を計測し,最大径が10cm以上,15cm未満の場合,カテゴリー2(良性)の脾腫で判定区分B(軽度異常)とし,最大径が15cm以上の場合,カテゴリー3(良悪性の判定困難)の脾腫で判定区分D2(要精検)と判定する(1)。門脈圧亢進症による脾腫の場合はパルスドプラ法による計測で脾動脈血流が増加している報告がある。

    06_32_脾腫

    CT:CTでの脾腫の目安は,①頭尾方向が10cm以上,②最大スライスで外側縁が4肋間以上にまたがる,③脾前縁が椎体前面より8cm以上腹側にある,④肋骨弓を越える(尾側),⑤中腋窩線を越える(内側),が挙げられる。

    造影CT:原病や側副血行路が判明することがあり,脾腫内部に多発結節がみられた場合には微小膿瘍(真菌,結核など),サルコイドーシス,悪性リンパ腫,転移などを考える。

    MRI:CTと同様の判定ができる場合が多いが,門脈圧亢進症では10%にGamna-Gandy bodies(ヘモジデリンの沈着)を認める。

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