□薬剤により惹起される筋障害である。まず休薬を試みるが,休薬のみでは改善しない場合もある。原因薬剤の薬効薬理により病態や対策が異なる。
□代表的な病態と原因薬剤を表に挙げる。詳細は独立行政法人医薬品医療機器総合機構「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索ページ」1)にて検索可能である。
□薬剤投与中に生じる近位筋有意の筋力低下,易疲労性や筋痛である。
□ステロイドミオパチーでは比較的高用量のステロイド内服やステロイドパルス療法を行った後に生じやすいが,長期投与に伴って生じることがある。通常は筋痛を伴わない。
□低カリウム血症では脱力感,壊死性ミオパチーや毒素性炎症性ミオパチーでは筋痛や筋把握痛が生じるが,軽症では軽度の筋肉痛のみであることもある。
□神経筋遮断薬とステロイドの併用で生じるいわゆるcritical illness myopathyないし急性四肢麻痺性ミオパチーでは人工呼吸器管理下に発症することが多く,離脱時に気づかれることもある。
□血液検査所見:低カリウム性ミオパチー,壊死性ミオパチー,毒素性炎症性ミオパチーではクレアチンキナーゼやアルドラーゼなどの筋逸脱酵素の上昇を認める。ステロイドミオパチーでは血中の筋逸脱酵素値は上昇せず,尿中クレアチン・クレアチニン比が上昇する。低カリウム性ミオパチーでは血清カリウム値が2mEq/L以下になることが典型的であるが,3mEq/L程度まででも生じることがある。
□画像所見:壊死性ミオパチーやcritical illness myopathy,低カリウム性ミオパチーではMRIでのT2強調画像やSTIRでの高信号を認める。
□筋電図検査:筋組織の炎症や壊死が生じる状況では安静時電位を伴う筋原性変化となる。ステロイドミオパチーでは著明な変化に乏しく,安静時電位の出現は少ない。
□筋病理所見:壊死性ミオパチーでは筋細胞の壊死再生を主体とした筋原性変化を呈する。リンパ球浸潤は乏しいが,HLA-ABC染色では形質膜の異所性染色性を認める。毒素性炎症性ミオパチーではリンパ球浸潤などの炎症を伴う。低カリウム性ミオパチーでは壊死再生,筋原線維間網の乱れに時に空胞を伴う。ステロイドミオパチーではtype 2 fiber atrophyがみられるが,壊死再生は観察されない。
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