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薬剤性ミオパチー[私の治療]

No.5267 (2025年04月05日発行) P.43

杉江和馬 (奈良県立医科大学脳神経内科学講座教授)

登録日: 2025-04-07

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  • 薬剤を原因とする筋障害(ミオパチー)は日常臨床でしばしば遭遇する疾患である。四肢の筋力低下が主症状である。原因薬剤は多岐にわたり,治療の基本は薬剤の中止あるいは減量である。原因薬剤により,可逆性に症状改善を認める場合と,不可逆性の筋障害のため積極的な免疫治療を要する場合がある。スタチン誘発性ミオパチーやステロイドミオパチー,コルヒチンやクロロキンでの自己貪食空胞を伴う筋障害,甘草での低カリウム性ミオパチーに加え,近年は免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)による筋炎が注目されている。

    ▶診断のポイント

    筋疾患の鑑別では常に薬剤性を念頭に置いて薬剤歴を確認する必要がある。筋症状や血清CK値の変動に注意する。薬剤性横紋筋融解症では救急対応が求められる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    いずれの薬剤においても,治療の基本は薬剤の中止あるいは減量と対症療法である。症状改善に乏しい場合は積極的な免疫治療を考慮する必要がある。薬剤性横紋筋融解症では急性期から脱水と腎機能障害の予防のため早期の大量補液を要する。

    【ステロイドミオパチー】

    グルココルチコイドの慢性投与により2型筋線維萎縮と近位筋優位の筋力低下を生じる。血清CK値の上昇はみられない。尿中クレアチニン排泄の増加がみられる。治療としてステロイドの中止が必要だが,回復には数週~数カ月を要することもある。

    【スタチン誘発性ミオパチー】

    スタチン製剤による筋障害として,四肢近位筋や体幹の筋痛,筋痙攣,こわばり,筋力低下をきたすことがある1)2)。稀に横紋筋融解症を呈する。一部では抗HMGCR(3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase)抗体が陽性となり,免疫介在性壊死性ミオパチー(immune-mediated necrotizing myopathy:IMNM)を発症することがある。この場合は高度の筋力低下とCK値の著増を呈し,スタチンの中止のみでは改善が得られず,ステロイドを含めた積極的な免疫治療を要する。

    【ICIによる筋炎】

    ICIによる免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)として,筋炎を呈することがある3)。四肢近位と体幹の高度の筋力低下に加えて,嚥下障害,呼吸筋障害,心筋障害,CK値の著増,抗横紋筋抗体陽性を呈する。筋束内での局所的な炎症細胞浸潤が特徴的で,ICIの中止とともに,ステロイドによる積極的な免疫治療を要する。重症筋無力症を伴うことがあり注意を要する。

    【その他の薬剤性ミオパチー】

    コルヒチンやクロロキン,D-ペニシラミン,甘草による筋障害の場合,まず原因薬剤の中止ないし減量を行う必要がある。

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