〈ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)〉
□急性発症の四肢筋力低下と腱反射低下・消失を主徴とする多発ニューロパチーである。
□年間発症率は人口10万人当たり1~2人前後と稀な疾患であり,小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症し,性差は約3:2でやや男性に多い。
□発症の1~2週間前に呼吸器感染や消化器感染を中心とした先行感染を認めることが多く,自己免疫機序によって発症する。
□先行感染のうち約6割は上気道感染で,消化器感染は約2割である。
□半数以上の症例で急性期血清中に末梢神経糖脂質に対する抗体が検出され,病態に強く関与していることが知られている1)2)。
〈フィッシャー症候群(Fisher syndrome:FS)〉
□急性発症の外眼筋麻痺・運動失調・腱反射低下あるいは消失を三徴とする免疫介在性ニューロパチーであり,80~90%の症例で上気道感染を中心とした先行感染が認められる。
□先行感染,脳脊髄液検査における蛋白細胞解離などのGBSと共通する特徴を有することから,同症候群の亜型と考えられている。
□FSの発症率を直接評価した疫学調査はなく,GBS患者との比率で報告されている。イタリアでは両疾患合計の3%,台湾では19%,日本では34%,26%との報告があり,欧州よりも東アジアで頻度が高いと考えられている。
□男女比はGBSと同様に男性優位で小児から高齢者まであらゆる年代で発症する2)~4)。
□典型的には手掌および足底の異常感覚で発症し,同時または少し遅れて左右対称性の四肢筋力低下をきたす。
□約2割の症例で呼吸筋麻痺をきたし,運動失調が主症状である症例もみられる。
□複視や顔面神経麻痺,嚥下・構音障害などの脳神経障害,さらに頻脈や血圧調節異常,膀胱直腸障害などの自律神経障害もよくみられる1)2)。
□複視,ふらつきが多くみられ,四肢筋力低下はないか,あっても軽度である。
□その他の症状として眼瞼下垂,嚥下・構音障害,瞳孔異常,顔面神経麻痺,しびれ感などの四肢異常感覚が代表的な症状として挙げられる2)4)。
□急性期に50~60%の症例で末梢神経の様々な糖脂質に対する自己抗体(抗糖脂質抗体)が検出される。
□発症初期より陽性となることが多く,初期診断において有用である。抗体価は急性期に最も高く,経過とともに低下・消失する。
□抗糖脂質抗体の中でもIgG抗GM1抗体の陽性率が高い。
□脳脊髄液検査における蛋白細胞解離は,診断に有用であるが,発症早期にはみられないことがしばしばある。
□神経伝導検査はH波・F波の消失・潜時延長,遠位潜時の延長,複合筋活動電位の低下,伝導ブロックなどが高率にみられる。初期においては異常をきたさない症例も存在する2)5)。
□FSでは80~90%の症例で急性期血清中にIgG抗GQ1b抗体が検出され,回復経過とともに低下・消失していくことが報告されており,診断マーカーとして確立されている6) 7)。
□同じ糖鎖末端構造を持つGT1aに対する抗体も同時に陽性になることが多い。脳脊髄液検査はGBSと同様の所見である。
□神経伝導検査では運動神経は正常であるが,約3割の症例で感覚神経活動電位の低下が認められる。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより