□多発ニューロパチーは四肢遠位部優位・左右対称性の症状分布様式を呈する末梢神経障害である。
□原因は薬剤,中毒・栄養・代謝障害,遺伝,炎症など多岐にわたる(表)。
□末梢神経障害は,病理的・電気生理学的には軸索障害と脱髄性障害の2つに,機能障害の点からは運動障害,感覚障害,自律神経障害の3つにわけられるが,原因ごとにこれらの特徴の組み合わせが異なっている。
□感覚症状,運動症状,自律神経症状の3つにわけて症状をとらえる。
□四肢の遠位優位,左右対称性の手袋靴下型の分布を呈するが,下肢遠位部の感覚症状で発症することが多い。病状が進行すると,体幹部の脊髄神経の遠位部である,体幹部腹側正中部の感覚障害を呈することがある。
□表在覚障害(温痛覚・触覚の障害)と深部覚障害(振動覚・関節位置覚の障害)との2つにわけられるが,感覚低下のほか疼痛・灼熱感などの異常感覚(自発性,刺激誘発性)もしばしばみられる。
□末梢神経障害の原因により障害される感覚の種類には特徴がある。
□通常,下肢優位・末梢優位の,左右対称性の四肢筋力低下を呈する。
□病初期には下肢のみに症状がみられることもある。前脛骨筋の筋力低下により下垂足となり,膝を高く上げる歩行(鶏歩)を呈する。
□腱反射は減弱~消失するが,アキレス腱反射が最も早期から低下することが多い。
□筋力低下によるものばかりでなく,関節位置覚の障害による失調性の運動障害がみられることがある。
□起立性低血圧,発汗低下,排尿・排便障害,勃起不全がみられる。
□四肢・体幹の発汗低下の代償として,顔面の発汗が亢進することがある。
□消化管運動障害により,食欲不振・体重減少がみられることもある。
□最も重要な検査は末梢神経伝導検査であるが,判定のパラメータとしては伝導速度の低下のほかに,遠位部刺激時の潜時,活動電位の振幅,波形にも注目する。
□これらのパラメータを総合して,軸索障害型か脱髄型かを判定する。
□小径線維が選択的に傷害されるようなタイプ(例:アルコール性ニューロパチー)では末梢神経伝導検査において異常が認められないことがある。
□髄液検査では,蛋白細胞解離の所見を認めることがあるが,疾患特異性は低い。
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