□百日咳は,百日咳菌(Bordetella pertussis)の飛沫または接触感染により特有の咳嗽発作を呈する急性呼吸器感染症である。咳が強く,長く続くことが特徴的である。ワクチン未接種の乳児期早期では,特徴的な咳嗽は少なく,無呼吸発作やチアノーゼ,脳症,突然死などの重篤な症状を引き起こすことがある1)~3)。また,既感染またはワクチン既接種の年長児や思春期,成人において発作性咳漱の頻度は高くない4)。百日咳の自然感染では約15年,現行のワクチンでは4~6年以上免疫が持続すると言われているが,百日咳の流行は学童や成人でもしばしばみられる。
□初感染では通常7~10日間の潜伏期を経て,かぜ症状で発症し,咳嗽を認める(カタル期:1~2週間)。しだいに発作性の激しい咳嗽となり,咳込み後の嘔吐も伴う(痙咳期:約3~6週間)。典型的には短い咳嗽が連続し(staccato),直後に吸気性笛声(whoop)を生じ,この咳嗽発作を反復する(reprise)。その後,咳嗽は徐々に軽快する(回復期:数週間)1)2)。しかし,百日咳に対する免疫の有無や罹患年齢により,必ずしも典型的症状を示すとは限らない。通常,発熱は伴わない。
□初感染では,白血球数(リンパ球)の増加が特徴的であるが,既感染またはワクチン既接種であれば白血球数(リンパ球)の増加はみられないことが多い。CRPは正常のことが多い。
□診断には,鼻咽頭からの百日咳菌分離,ペア血清での百日咳菌凝集素価上昇,ELISA法による抗pertussis toxin(PT)およびfilamentous hemagglutinin(FHA)抗体価測定,ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法やloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法などの遺伝子検査が行われる。しかし,保険収載され臨床現場で迅速かつ容易に実施可能な検査は現状では確立されていない。診断のフローチャートを図5)に示す。
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