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【識者の眼】「COVID-19レプリコンワクチン〜My unanswered questions(Ⅱ)」西村秀一

西村秀一 (独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長)

登録日: 2025-03-14

最終更新日: 2025-03-14

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前稿(No.5262)で取り上げたCOVID-19レプリコンワクチン(以下、「レプリコン」)の生体内での残存期間だが、あらためて考えてみればmRNAレプリコンは、がんや希少代謝疾患等への適用も検討されてきたはずである。その過程で、局所に接種されたレプリコンの体内分布や機能の発現期間などの先行研究はあってもよいように思われるのだが、いかがか。

さて本稿では、先延ばしにしていた「もし接種後に長期残存した場合」にどのようなことが考えられるかがテーマである。ネガティブな可能性の話だけで申し訳ないが、brain stormingである。書き出してみた。

もし、レプリコンが長期間S蛋白質抗原を体内で出し続けたとしたら

①抗原原罪現象(original antigenic sin)が生じる可能性……これは、抗原変異が宿命のようなインフルエンザウイルスに対する免疫反応で昔から有名な現象で、「初めて感染したウイルス株に対して体内でつくられる抗体が、その後に感染した異なるウイルス株に対してもつくられ、極端な場合、前者のほうが優勢になることもある」というものである。たとえば、ナイーブな小児が初めてレプリコンの接種を受けたときにこれが起き、その後新たな変異ウイルス抗原に対する免疫反応やワクチンの効きが弱まる可能性はないか。

②ウイルス中和抗体以外の抗体が産生されやすくなる懸念……S蛋白質にはレセプター結合部位のような抗体の結合によってウイルスが中和される部位と、そうでない抗原部位がある。前者に対する抗体が十分なうちは問題がない。一方で十分でないときである。後者が重症化に関連している可能性も、たしか指摘されてきたはずである。S蛋白質抗原の存在が常態化しいつも体が抗原に晒されていたら、中には後者に対する抗体のほうが優勢になるような人が出て来はしないか? いわゆる抗体依存性感染増強のようなことは起きないか。

③S蛋白質それ自体が何がしかの悪さをする懸念……当初、ウイルス感染において血管・凝固系の異状が取りざたされ、それがmRNAワクチン接種でも頻度は低いがあったと記憶している。あの話はその後どうなったか? 体内で常にS蛋白質が発現されている場合、それが血中に流れ、そうした病態がどこかで生じる可能性はないか。

以上、筆者からのquestionsである。たぶん中途半端な知識による妄想であろう。この妄想を吹き飛ばしてくれる明快なanswersを筆者は求めている。重箱の隅を突っつくようなケチつけ話という勿れ。そもそも「もし」で始まった話であるが、その「もし」があるかないか判然としない中、現実として既に接種は始まっている。願わくば、こうした点に焦点を当てた中立的立場に立ったスタディがほしいところである。

西村秀一(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長)[COVID-19][レプリコンワクチン

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