2011年、少数例の検討ながら、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に伴う心血管系(CV)疾患リスクの上昇が報告された[Kuo HK, et al. 2011]。
3月29日から米国シカゴで開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会では、この点を調査した大規模観察研究の初めてとなるメタ解析が公表された。その結果、血圧には悪影響を及ぼさないにもかかわらず、冠動脈疾患リスクは2倍に増加するという興味深い結果が得られた。ユーコン医学校(米国)のStephen Akinfenwa氏が報告した。
解析対象となったのは、観察研究7報である(対象総数:24万9366名)。研究ごとの対象平均年齢は20~75歳。3報は米国から報告され、2報は韓国、そしてブラジルと豪州からが1報ずつだった。
HPV感染の有無で2群に分け、CV疾患リスクを比較した。観察期間は3~17年である。
その結果、HPV「陽性」例では「陰性」例に比べ、CV疾患発症オッズ比が1.40(95%CI:1.21-1.61)の有意高値となっていた。冠動脈疾患に限れば2.0(同:1.29-3.10)である。一方、高血圧は0.96(0.68-1.36)だった。
HPV陽性例におけるCV疾患リスク上昇は、既往歴や家族歴、生活習慣、服用薬などを補正後も、有意だった。
Akinfenwa氏は、HPV感染がCV疾患のいわゆる「残余リスク」(明らかになっていないリスク)である可能性を指摘した。その上でHPVワクチンがCV疾患を抑制する可能性があるのか、検討する必要があるとしている。
本研究における利益相反は不明である。