□鳥のインフルエンザは主として鳥の間で流行するが,感染鳥との濃厚接触により稀にヒトにも感染する。特にA(H5N1)やA(H7N9)はヒトに重篤な感染症を起こす。
□現時点ではこれらのウイルスはヒトに対する感染力は弱く,ヒト─ヒト感染もほとんどみられない。しかし,インフルエンザウイルスは変異を起こしやすいことから,ヒトに感染しやすく変異する可能性があり,注目されている。本項ではA(H5N1)とA(H7N9)について記す。
□インフルエンザA(H5N1):1997年,香港で最初のヒト感染例が報告された。2016年7月までに東南アジア,エジプトなどで累積854名の感染者と450名の死亡が確認されている。比較的若年層に多い。
□インフルエンザA(H7N9):2013年,中国東部で最初のヒト感染例が報告された。2016年7月までに主として中国で793名の感染者と319名の死亡が確認されている。比較的高齢者,基礎疾患を持つ者に多い。
□インフルエンザA(H5N1):潜伏期間は2~5日程度,ほぼ全例で38℃以上の発熱,咳嗽を認めるほか,呼吸困難,咽頭痛,鼻汁,下痢,筋肉痛,頭痛などがみられる。大部分が肺炎・呼吸不全を合併し,発症者の約半数が死亡している。
□インフルエンザA(H7N9):潜伏期間は3日程度。大部分で38℃以上の発熱,咳嗽を認めるほか,喀痰,悪寒,全身倦怠感,関節痛,呼吸困難などがみられる。重症肺炎を合併することが多く,発症者の約1/3が死亡している。
□インフルエンザA(H5N1):末梢血白血球数減少,特にリンパ球減少,血小板減少がみられる。胸部X線上の肺炎像は発症後3,4日目頃から出現しはじめ,急速に悪化し急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)となる。
□インフルエンザA(H7N9):末梢血中のリンパ球減少,血小板減少,AST,LDH,CKの上昇などがみられる。
□診断は,RT-PCRによるウイルスRNAの検出によってなされる。季節性インフルエンザの診断に用いられる迅速診断キットの有用性は,個々のウイルスによって異なる可能性があるため,個別に評価する必要がある。
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