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狂犬病

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-21
山本舜悟 (京都大学医学部附属病院総合臨床教育・研修センター臨床研究教育・研修部)
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  • ■疾患メモ

    狂犬病の国内発生は1957年が最後だが,2006年には36年ぶりに2例のフィリピンからの輸入症例があった1)。毎年世界中で55000人が狂犬病で亡くなり,曝露後予防をまったく行わなければ毎年32万7000人が狂犬病で亡くなると推定されている2)。決して過去の病気ではなく,ヒトや動物の行き来が活発になった今日,いつまた輸入症例が発生してもおかしくない状況である。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    狂犬病は2つの病型にわかれる。典型的な恐水症状を呈する狂躁型が80~85%と大部分を占め,残りはそれら典型症状を呈さない麻痺型である。

    狂犬病の症状は5段階の病期,すなわち潜伏期,前駆期,急性神経症状期,昏睡期,死亡にわかれるが,これは咬傷部位や咬傷時のウイルス注入量によって経過の速さが異なる。一般には,脳に近い部分を咬まれると発症までが速いと言われる。

    潜伏期は10日~1年間(平均20~60日間)であるが,7年という長い潜伏期の後に発症したという報告もある。

    潜伏期の後に前駆期がおとずれ,1日~2週間程度続く。典型的には発熱,倦怠感,頭痛,悪心,嘔吐,筋肉痛など感冒様症状である。咬傷部位の知覚過敏や痛み,かゆみを訴えることもある。その後急性神経症状期になり,構音障害や嚥下障害,唾液の増加がみられ,落ちつきのなさや興奮状態になり,幻覚症状が現れることがある。水を怖がる恐水症状や風を怖がる恐風症状もこの時期にみられる。1週間ほどの急性神経症状期の後に昏睡期がおとずれる。長時間の無呼吸や全身の弛緩性麻痺,痙攣が起こり,呼吸不全,循環不全に陥り,やがて死に至る。

    【検査所見】

    種々の検査は非特異的であり,診断には臨床診断が大きなウェイトを占める。

    生前診断として,皮膚(後頸部など)生検での免疫蛍光染色によるウイルス抗原の証明,唾液,脳脊髄液のPCR法によるウイルス遺伝子の証明がある。

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