□ヒゼンダニが皮膚表面の角層に寄生する感染症である。ヒゼンダニの虫体や排泄物に対するアレルギー反応により,そう痒を伴う皮疹が生じる。
□ヒゼンダニは,0.2~0.4mm程度の大きさである。交尾した雌成虫は,指間や陰部などに移動し,角層内に潜り込んでトンネル(疥癬トンネル)を形成しつつ,その中で産卵する。卵は幼虫を経て2週程度で成虫となる。
□直接の接触を介して感染することが多い。成虫は人から離れると短時間で死んでしまうが,暖かい環境ではしばらく生き残っているため,寝具等を介して感染することもある。症状と周辺での流行状況に留意して診察する。
□そう痒を伴う丘疹や小結節が,様々な場所に出現する(図1)。皮疹は融合傾向が乏しく,散発する傾向を示す。特に指間や手関節,手掌や外陰部が好発部位である。そう痒は激しく,特に夜間に顕著であるため不眠に至ることもある。
□非典型的な湿疹性病変である場合や,副腎皮質ホルモン外用薬などの効果が乏しい場合などでは,指間や外陰部などの好発部位に皮疹がないか注意する。
□感染してから通常1カ月程度経過してヒゼンダニが増殖し,またダニに対する感作が成立して,そう痒が生じる。疑わしい場合,家族や職場の同僚に同様の症状を持つ者がいるかといった点も問診する。
□強いそう痒を呈するので,アトピー性皮膚炎や痒疹といった湿疹性病変の他,虫刺症や蕁麻疹などが鑑別診断すべき皮膚疾患である。通常の疥癬では,頭部,顔面,頸部には皮疹は生じない点に留意するとよい。
□病型には通常の疥癬の他,重症型の角化型疥癬(いわゆるノルウェー疥癬)がある。角化型疥癬では,厚い鱗屑が牡蠣殻のように付着し,亀裂を伴うことが多い。通常の疥癬と比べてダニの数が多く感染力が強い。基礎疾患を有する場合や免疫不全がある場合,さらに高齢の場合,角化型疥癬に注意する必要がある。
□丘疹,小結節や疥癬トンネルから,虫体や虫卵,卵の抜け殻を検出すると診断は確定する。虫体や虫卵,卵の抜け殻は疥癬トンネルで見つかることが多い。
□まずは疥癬トンネルを探すのが大切である。
□疥癬トンネルは,皮膚表面からわずかに隆起し,蛇行して白っぽく見える数ミリの皮疹で,指間,手掌,外陰部,臀部,腋窩などにみられる。ダーモスコープ等を用いると,トンネル先端に虫体を確認できることも少なくない(図2印)。
□小水疱を見つけた場合,虫体・虫卵の検出を試みる。トンネル部を針で破ったり,剪刀を用いてトンネルをこそげ取り,得られた検体をスライドガラスにのせる。20%水酸化カリウムを滴下し,カバーガラスをのせ,顕微鏡で観察する。
□指間,手掌,手首をしっかり診察し,複数部位を検査する。むやみに検体を採取するより,疥癬トンネルをしっかり探して検体採取するとよい。
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