ボーエン様丘疹症は性行為感染症であり,ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)の主として16型の感染によって生じる。陰茎では陰茎上皮内新生物(penile intraepithelial neoplasia :PIN)と呼ばれ,外陰部では外陰部上皮内新生物(vulvar intraepithelial neoplasia:VIN)とも呼ばれる。
ボーエン様丘疹症は,若年者の陰茎亀頭,包皮,外陰,肛門周囲といった皮膚・粘膜移行部に褐色,黒褐色,黒色の丘疹が多発性に散在,集簇する。特に自覚症状のない隆起性小腫瘍である。小丘疹が融合して局面を形成することもある。経過は自然に消退する症例もみられるが,有棘細胞癌へ進展するケースもある。
病理組織学的にボーエン病と類似した組織像を呈するのが特徴で,これが名前の由来となった。すなわち上皮内に核異形成,分裂像をはじめ,clumping cellを認め,基底膜が保たれているのが基本的構築である。しかしPINやVINは,病理組織学的に上皮内に細胞の異形性が1/3,1/2,2/3以上ある場合に各々グレードI,Ⅱ,Ⅲと分類される。したがって,ボーエン様丘疹症の病理組織像は必ずしも同一ではなく,グレードIでは上皮の肥厚とわずかな核異形成,分裂像のみである。また,PCR法等によるHPV遺伝子検査では16,18,31,33,45,52,58型等のようなハイリスク型HPVが必ず検出される。近年,ハイブリッドキャプチャー法はHPV遺伝子検査において保険適用とされている。簡便で診断学的にも有用である。
ボーエン様丘疹症の治療には凍結療法,電気凝固療法,炭酸ガスレーザー治療,外科的切除術,5-アミノレブリン酸媒介光線力学療法(ALA-PDT),5-FU(フルオロウラシル)軟膏外用,イミキモド外用などがある。これらの治療は適応外使用がほとんどであるため,患者から同意を得る。
一般的な治療は,凍結療法やイミキモド外用などで数カ月,経過をみていく。あまり変化のない際には,外科的切除や電気外科療法などを選択している。すなわち,局所麻酔下にてハサミで切除し,電気メスや炭酸ガスレーザーで止血させる。局面形成の病変には,止血かつ抗菌効果のあるハイドロファイバーⓇに銀イオン効果をプラスした抗菌性創傷被覆・保護材を貼付すると,施術後の出血がなく上皮化を促す。
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