外傷や手術などの創傷治癒の過程に起こる異常で,膠原線維の過剰増生を生じた状態である。境界明瞭な紅色あるいは褐色の扁平隆起した増殖性病変を呈する。
ケロイドは創部の範囲を超えて広がり続ける異常な瘢痕である。境界明瞭な扁平隆起や半球状隆起が生じて紅色あるいは褐色を呈する病変で,徐々に側方に進行する。瘙痒感と側圧痛(横からつまむと痛い)を伴う。下床に軟骨・骨のある部位で,皮膚に張力がかかりやすい部位である前胸部,顔面,上腕,背部に好発する。
肥厚性瘢痕(hypertrophic scar)は創部の範囲を超えないで垂直方向に増殖する瘢痕と言われている。ケロイドに比べて隆起,紅色調も少なく,側圧痛も少ない。通常,肥厚性瘢痕は受傷後6カ月程度で最も隆起し,その後は徐々に改善し平坦化する。一方でケロイドは,病変が長期間にわたり持続する。
ケロイド・肥厚性瘢痕のリスクとして,創傷が深く治癒に時間がかかるほど生じやすく,細菌感染や異物反応,外傷などにより遷延する炎症,尋常性痤瘡などの皮膚の炎症性疾患,外力なども挙げられる。ケロイドの形成しやすさは個人の体質や人種が関与している。白色人種に少なく,黒色人種に多い。妊娠や高血圧は悪化因子である。熱傷,外傷後や手術後など,はっきりした既往がある場合が多いが,突然発生する場合もある。
鑑別が必要となるのは皮膚線維腫,隆起性皮膚線維肉腫などである。鑑別には生検による組織診断が必要であるが,生検によって新たなケロイド・瘢痕を生じる可能性があるため注意する。
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