□抗アデノウイルス薬はなく,対症療法が基本となる。
□院内感染,家族内感染,職場内感染の拡大を防ぐ。
□角膜混濁を防ぐ。
□迅速診断キットで陽性なら確定できるが,陰性で本症を完全に否定することはできない。
□有効なヒトアデノウイルス薬はない。
□感染の拡大予防が重要である。
□乳幼児または細菌との混合感染が疑われる場合には抗菌点眼薬を使用する。
□非ステロイド性抗炎症点眼薬などで,ウイルス粒子を物理的に洗い流す。
□溶連菌の混合感染が起こると角膜潰瘍や穿孔を生じるので,予防的に抗菌点眼薬を用いる。
□発症後1~2週で多発性角膜上皮下浸潤を生じることがある(図2)。ウイルス抗原に対する遅延型過敏反応であるため,フルメトロン®0.1%(フルオロメトロン)点眼液などを用いる。
□多発性角膜上皮下浸潤および混濁は自然消退することもある。重症例ではステロイドの点眼を用いることでしだいに混濁は消退するが,時には数カ月を要することもある。数カ月後に再発することもあり,注意を要する。
□乳幼児が罹患すると瞼結膜に偽膜を形成することが多い。
□咽頭結膜熱(プール熱)は,主にアデノウイルス3,7,11型により発生する。小児に多く,潜伏期は約7日間で,結膜炎,咽頭炎,発熱を3主徴とする。流行性角結膜炎に比べて臨床症状,所見ともに軽度で,経過も1~2週間と短い。口蓋扁桃の発赤・腫脹,咽頭の発赤を生じ,発熱は38~40℃に達して約1週間続く。糞便・尿中にウイルスが排出されて感染源となるのでプールでの大流行をみることがある。
□結膜充血,そう痒感,結膜乳頭増殖などの臨床症状に加えて,抗原特異的血清IgEや皮膚反応が陽性であれば準確定診断であるが,この場合は眼局所でのアレルギー反応は証明されていない。さらに,結膜擦過物中で好酸球が証明されれば確定診断となる。涙液中IgEに対する免疫クロマトグラフィ法を用いた迅速診断キットが発売されており,健康保険が適用される。感度は60%程度,特異度はほぼ100%である。
□流行性角結膜炎は学校保健安全法が定める第3種感染症であり,感染の恐れがないと医師が認めるまで学校への出席は停止となる。
□咽頭結膜熱は学校保健安全法が定める第2種感染症であり,主要症状消失後2日を経過するまで学校への出席は停止となる。
□アルコールなどによる消毒の効果は限定的である。感染経路は接触感染であるから,感染の拡大予防には手洗いの励行が重要かつ有効である。
□全国サーベイランス対象疾患であり,約600の眼科定点から情報が収集されている。ウイルスの変異とともに大流行を繰り返す。
□臨床症状はD種では重症,B種とE種では比較的軽症である。
1) 北市伸義:日本の眼科. 2016;87(6):736-41.
2) 北市伸義:一目でわかる眼疾患の見分け方 上巻. メジカルビュー社. 井上幸次, 他, 編. 2016, p70.
3) 北市伸義, 他:医のあゆみ. 2011;237(2):210-4.
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