株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

水晶体偏位・脱臼[私の治療]

No.5260 (2025年02月15日発行) P.49

二宮欣彦 (行岡病院副院長,大阪大学脳神経感覚器外科学(眼科学)臨床教授)

登録日: 2025-02-12

最終更新日: 2025-02-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 水晶体は,チン小帯もしくは毛様体小帯と呼ばれる線維状の組織で毛様体に固定されている。チン小帯は張力線維として機能しているが,結合組織蛋白質であるフィブリリンで構成されている。そのため,フィブリリン遺伝子の変異であるマルファン症候群や外傷などでチン小帯が損傷すると水晶体を正位に保持できなくなり,水晶体偏位・脱臼を起こす。また,眼科疾患としては成熟白内障,偽落屑症候群,網膜色素変性症などに合併することが知られる。そして白内障手術もチン小帯にストレスを与え,チン小帯の数は年齢とともに減少することから,眼内レンズ(intraocular lens:IOL)が水晶体囊内に固定されている状態での偏位・脱臼も含めると,人口の高齢化に伴い症例数は増加している。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    通常,突然の視力低下を主訴とするが,一般に片眼に起こるので自覚されにくいことがある。体位・頭位により(水晶体の位置や傾きが変わるため)見え方が変わることで,脱臼前に気づくことがある。前述の眼科疾患のため既に視機能が低下している場合は,視力低下が主訴にならないことがある。また,前房内など前方に水晶体が偏位・脱臼した場合や水晶体融解をきたした場合は,眼圧上昇のため痛みや毛様充血を伴うことがある。

    【検査】

    細隙灯顕微鏡で水晶体の位置を確認することで診断するが,虹彩の裏面にある場合(特にIOLの偏位の場合)は脱臼した水晶体やIOLを細隙灯顕微鏡,眼底検査で確認できないことがある。その場合,隅角鏡や超広角走査型レーザー検眼鏡が有効である場合がある。

    残り1,254文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top