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網膜中心動脈閉塞症[私の治療]

No.5250 (2024年12月07日発行) P.39

池田華子 (大阪医科薬科大学医学部眼科学教室特務教授)

登録日: 2024-12-09

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  • 網膜中心動脈閉塞症(central retinal artery occlusion:CRAO)は,眼動脈の分枝である網膜中心動脈が閉塞することにより起こる。治療方針の異なる動脈炎性,非動脈炎性に2分類され,非動脈炎性はさらに永続性と一過性タイプに分類される。毛様網膜動脈が開存している場合には,一般的に視力予後が良好である。

    ▶診断のポイント

    急激な,通常,片眼性の無痛性の高度視力低下・視野障害を特徴とする。動脈炎性の場合には側頭部痛を伴うことや両眼性のことがある。網膜全体が乳白色に混濁する。中心窩には網膜内層がなく浮腫が起こらず,本来の橙赤色に見えるため,cherry-red spot(桜実紅斑)と呼ばれる特徴的な所見がみられる。網膜動脈の狭細化も著しい。フルオレセイン蛍光眼底造影撮影にて,網膜動脈への流入遅延を認める。動脈相から静脈相への循環時間も延長する。OCTでは,細胞・神経線維内の浮腫により,網膜内層が肥厚し,高反射となる。強度近視眼などで網膜の乳白色混濁の判断が難しい場合には,診断の助けとなる。動脈炎性CRAOでは,側頭動脈に沿った圧痛,血沈亢進,CRP上昇がみられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    非動脈炎性CRAOでは,視力予後を改善させる確立した治療法がない。急性期には塞栓を移動,血栓を溶解させ血流再開を図る目的で,眼球マッサージを行う。発症から4.5時間以内などの急性期では,出血性脳梗塞などの危険性および視機能改善の十分なエビデンスはないことを説明の上,患者が強く希望すれば,他科と連携し線溶系治療を行う。原因や併発症精査を十分に行うことが重要である。亜急性期では,眼圧が高めの場合には,相対的に網膜内灌流圧を上昇させるために眼圧下降薬を使用することがある。また,血管拡張薬を点滴したり,高圧酸素治療を行ったりすることがある。一過性非動脈炎性CRAOや網膜動脈分枝閉塞症では,原因精査に重点を置く。

    動脈炎性CRAOでは,僚眼の発症予防のため,速やかに大量ステロイド治療を開始する必要がある。

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