網膜の中心である黄斑上に,薄い病的な膜が形成される疾患である。この膜は硝子体細胞や網膜グリア細胞,網膜色素上皮細胞などのほか,これらが形質転換した筋線維芽細胞などにより構成される。網膜上膜(epiretinal membrane:ERM)が網膜を物理的に牽引し,網膜の構造を障害することで,視力低下や歪視,不等像視(大視症)などの視機能障害をきたす。
40歳以上の約10%に発症すると報告されており,加齢が危険因子である。加齢以外に原因を認めない特発性ERMが最も多い。一方で,糖尿病網膜症や網膜循環障害,眼内炎症,網膜裂孔,網膜剝離,外傷などを原因として発症する場合もある(続発性ERM)。
有効な薬物治療はない。ERMを外科的に剝離除去し,網膜にかかる牽引を解除することが唯一の治療法である。
明確な手術適応基準が存在しないため,視機能障害の程度に応じて手術適応を判断する。筆者らは,矯正視力1.0未満,M-CHARTSTM値0.5以上を目安に手術を検討している。
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