□色覚異常は先天異常と後天異常とに大別される。
□網膜視細胞を構成する錐体細胞の異常*1により生じる色誤認である。色認識の生理学的機能および錐体を規定する遺伝子型により表現型としての色誤認には幅があるが,誤認を生じる可能性のある配色を図1に示す。ただし,先天異常は左右眼で色認識に差がなく,光覚,視力,視野は正常である。
□可視光(約400~700nm)のいずれかまたはすべての波長の識別での異常を有する状態で,色覚異常以外に他の視機能(光覚,視力,視野)の異常を伴い,左右眼で色覚異常に差がある。ただし,中枢性の場合には左右差がないこともある。
□色覚は,外界からの色光を波長感受性が異なる3種類の網膜錐体細胞*2により生体シグナルに変換され(第1ニューロン),網膜内の双極細胞,水平細胞(第2ニューロン),神経節細胞(第3ニューロン)の間で一方向でのシグナル伝達のみではなくニューロン(細胞)間での複雑な刺激と抑制とが行われ,視中枢にシグナルが到達し,色として認識される。色認識の視中枢は視覚中枢全体に存在するのではなく,紡錘状回が色認識の中枢であり,視野としては中心部のやや下方の部位に相当する。
□先天色覚異常はM-およびL-錐体の異常,後天性色覚障害は網膜錐体細胞から紡錘状回までの障害により色覚異常が生じる。
□先天色覚異常は,遺伝子型により網膜錐体細胞の色感受性色素(視色素)の発現が異なる結果,表現型としての異常として現れる。視細胞には,各々波長感受性の異なる視色素が存在する。支配遺伝子はS-錐体は7番の常染色体,M-,L-錐体はX染色体である。このため先天色覚異常ではX染色体連鎖性劣性遺伝が主体であるため,S-錐体異常によるものは臨床的には無視してよい。
□X染色体上に座位を有するRおよびG遺伝子の異常により,L-またはM-錐体内の視色素の異常が生じる。視色素の欠損は2色覚,視色素の機能が不十分であるものは異常3色覚となり,さらにL-錐体の場合は1型,M-錐体の場合は2型と分類される。すなわち,1型2色覚と1型3色覚(この場合"異常"は削除して扱う),2型2色覚と2型3色覚の4タイプが存在する。これらの先天色覚異常の頻度は,男性で5%,女性で0.2%であるが,女性の場合は異常遺伝子の保因率は10%である。
□2色覚者はL-またはM-錐体機能の欠損によるために混同する色の関係が明確で,生活上,他人との比較または他人の指摘により正常とは異なることを自覚している例が多い。一方,異常3色覚は錐体の機能不全によるためにその不全の程度により色認識は正常色覚者に近い例から2色覚に近い例まで幅が広い。異常3色覚では仮性同色表などの検査表で正常色覚と比較しない限り,色覚異常を自己認識しない例も多い。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより