□夜盲症は,暗所において視機能障害をきたす病気の総称であり,先天的(遺伝的)な原因による疾患と,後天的な原因による疾患にわけられる。
□先天的(遺伝的)な原因による夜盲症は,さらに非進行性の夜盲症と進行性の夜盲症にわけられる。最も多い疾患は進行性の夜盲症の網膜色素変性であり,約3000人に1人の頻度である。
□後天的な原因による夜盲症は,ビタミンA欠乏症と腫瘍随伴網膜症が重要である。
□先天的な原因による非進行性の夜盲症の場合(先天停在性夜盲,小口病,眼底白点症状など)は,生来の暗所での見にくさに保護者が気づいて3~6歳頃に受診することが多い。
□先天的な原因による進行性の夜盲の場合(網膜色素変性など)は,ある時期から本人が夜盲に気づいて受診する。学童期から青年期になって夜盲を自覚することが多いが,成人以降での発症もめずらしくない。家族歴の聴取も重要である。
□後天的な原因による夜盲症の場合は,成人以降に急激な夜盲を自覚することが多い。ビタミンA欠乏による夜盲症は,腹部手術や消化器系の疾患あるいは術後の合併症として発症することがほとんどである。
□腫瘍随伴網膜症は悪性腫瘍の治療中(肺癌が多い)に夜盲を訴える場合が多いが,体内に腫瘍が見つかる前に夜盲が出現することもある。
□まず一般的な視力検査および視野検査を行う。先天的な原因による非進行性の夜盲症であれば視野は正常であるが,先天的な原因による進行性の夜盲症や後天的な夜盲症であれば,視野の狭窄(ドーナツ状暗点,あるいは周辺部の視野欠損)がみられる。
□眼底検査により眼底に異常がないかを確認する。先天的な原因による非進行性夜盲症の小口病であれば眼底に金箔状の反射がみられ,眼底白点症であれば無数の小白点がみられる。先天的な原因による進行性の夜盲症である網膜色素変性であれば,眼底の周辺部に色素沈着がみられることが多い(図a)。
□網膜色素変性であれば,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)で周辺部の網膜外層構造が欠損する。また眼底自発蛍光(fundus autofluorescence:FAF)では,網膜の異常部位と正常部位の境界に過蛍光リングがみられる。
□網膜電図(electroretinogram:ERG)はすべての夜盲症の診断に有用である。網膜色素変性の初期で眼底にあまり異常がない時期でも,ERGは強い異常を示す(図b)。
□後天性の夜盲症が疑われる場合は,血中のビタミンA値の計測,全身の腫瘍検索(全身CTやPETなど),また網膜蛋白に対する血清中の自己抗体の検索を行う。最も重要な抗リカバリン抗体は外注でオーダーが可能である。
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