□手足口病(hand,foot and mouth disease:HFMD)は,1950年代後半より知られるようになったウイルス性発疹症である。
□コクサッキーウイルスA群(CA),エンテロウイルス71(EV71)が病因の大半を占める。
□潜伏期間は3~5日,毎年5月頃から出現し7月下旬くらいに流行のピークを迎え9月には減少するが,11月頃まで続くこともある。
□定点報告では,5歳までの乳幼児が90%近くを占める。成人での発症もあるが多くはない。
□原因となるウイルスはCA16,EV71が多いとされていたが,これ以外にもCA4,CA6,CA9,CA10などが分離・検出されている。年によって主体を占めるウイルスは変化するが,近年ではCA6の大きな流行がみられる(図1)1)。
□手足口病と診断された症例の検体から,近年話題となっているエンテロウイルスD68型(EV-D68)が検出されている(後述)。
□口腔粘膜,手掌や足底,殿部・膝などに現れる水疱性の発疹が主症状であり,ほかに症状のないことも多い。
□発熱は1/3程度にみられ,一般に38℃程度の微熱である。ただし,高熱と咽頭の発疹で発症し,初診時はヘルパンギーナと診断したものが,その後手足に発疹が出て手足口病と診断名を変更されることもある。
□発疹は,通常3~7日の経過で消退し褐色調となり,水疱が痂皮を形成することはない。あるいは,あっても点状の小痂皮にとどまる。
□CA6による手足口病は,他のウイルスによるものと比較して水疱が大きく,出現部位も全身に広がることがあり,水痘と誤診されることもしばしば見受けられる。
□CA6による手足口病では,罹患から数週間後に爪の脱落が起こることがある。爪の脱落をみたときには数週間前の手足口病の罹患を確認することが診断に役立つ(図2)。
□血算・血液生化学検査:特徴的なものはない。
□病原診断のためには,糞便,直腸拭い液,咽頭拭い液を用いたウイルス分離・検出を行うが,無菌性髄膜炎では髄液を用いることが多い。
□血清診断はペア血清による中和抗体価の上昇をみることになるが,補助的にしか使われていない。
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