日本小児科学会は「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール」を定期的に改訂し、ホームページ上で公開している。近年は接種推奨ワクチンが増加していることから、学会推奨のスケジュール通りに接種すると、特に乳幼児期に関しては、混合ワクチンを利用した場合であっても同時に4〜5種類を接種せざるをえない状況に遭遇することも多い。
その結果、国内において同時接種文化がかなり浸透した今日であっても、しばしば保護者から「何回かにわけて接種することはできませんか?」「もう少し成長してからゆっくり接種してはいけませんか?」などと相談を受けることがある。同時接種により何度も大泣きをする小さな我が子を見て、思わず接種の分散や延期をリクエストしたくなる親心は十分理解できる。そんなときに、もし小児科医が、「今日は半分だけ接種して残りは後日にしますか?」などと提案したら、一定の保護者は喜んでその提案を受け入れてしまうのではないだろうか。
実際、国内外には「alternative vaccine schedule」を推奨し、一部の保護者から熱狂的な支持を受けている医師がいるが、筆者は医学的妥当性がある例外を除き、学会推奨のスケジュール通りの同時接種を強く勧めている。
学会推奨のスケジュールで接種するメリットとしては、①最も速やかに被接種児をvaccine preventable diseases(VPDs)から守ることができる、②最も多くの接種実績により提供された信頼性の高い安全性・有効性に関するエビデンスのもとで接種ができる、③推奨スケジュールを提供している国や地域のVPDs流行状況に最も合致したスケジュールでの接種ができる、などが挙げられる。
各ワクチンを最も効率的かつ安全に接種し、最大の有効性を得るためには、学会推奨のスケジュールなどによる正式な推奨に沿って接種を完了した同じ国や地域の先人たちの「マネ」をすることが最も近道なのである。
子どもに優しい小児科医は、保護者と同様、思わず分散接種などのalternative vaccine scheduleを提案したくなるが、筆者は、VPDsの怖さを知っている小児科医だからこそ、心を鬼にして学会推奨のスケジュール通りの接種を毅然と推奨するべきであると考えている。その際、被接種者や保護者が少しでも安心して接種を受け入れることができるように、学会推奨のスケジュールを遵守する意義と重要性を保護者にわかりやすく、十分説明をすることこそが小児科医の責務なのではないだろうか。
勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[予防接種][小児科][学会]