□受診時の身長および成長率を用いて評価する。身長については,当該年齢の健常小児身長の-2SD以下,あるいは3パーセンタイル以下を基準として用いる。
□身長-1.5SD前後の児が,低身長を主訴に受診する場面をしばしば経験する。身長-1.5SDは6~7パーセンタイルに相当する。男女20人ずつのクラスであれば,児の背の順は1~2番目であり,本人や家族の心情は理解できる。しかし,成長率が維持されている限りは低身長(short stature)に該当しない。その旨を丁寧に説明し,後述するスクリーニング検査自体を行っていない。
□成長率については,身長増加率-1.5SD以下を基準として用いる。受診時の身長が-2SD以上あるいは3パーセンタイル以上であっても,成長曲線を作成した際にチャネルの急激な下方シフトがみられるときは,脳腫瘍など重篤な疾患の可能性も念頭に置く必要があり,頭部MRI検査,内分泌学的検査を必ず行うようにする。
□低身長をきたす主な疾患は,表にまとめた。
□ここでは,低身長以外に確認すべき項目を挙げる。
□現病歴:多飲・多尿,頭痛,嘔気・嘔吐,視力低下,視野狭窄などの有無を確認する。
□既往歴:在胎週数,分娩様式,胎位,出生時身長・体重・頭囲,新生児期の異常(新生児仮死,新生児低血糖,黄疸の遷延)などの周産期情報,新生児マススクリーニング結果,精神運動発達,頭部外傷(交通事故),下垂体近傍脳腫瘍,下垂体近傍手術・放射線照射,慢性疾患,副腎皮質ステロイドホルモン使用,食物アレルギー,食事制限,などを必ず確認する。
□家族歴:血族結婚の有無,両親や同胞の身長実測値および思春期発来の時期(身長が伸びた時期,初経年齢)を確認する。
□社会歴:食生活,生活習慣,運動習慣,家庭環境などを確認する。
□理学的所見:身体計測(身長,体重,頭囲,座高,アームスパン),プロポーション(四肢短縮あるいは体幹短縮),体格の左右差,BMIあるいは肥満度,外表奇形,甲状腺腫,肝脾腫,外傷などを確認する。その際,外陰部診察,思春期徴候診察なども併せて行う。
□スクリーニング検査としては,一般血液検査,尿検査,骨年齢検査を実施する。また,症例によって染色体検査,内分泌検査,頭部MRI,全身骨X線,成長ホルモン(GH)分泌刺激試験などを併せて行う。
□一般血液検査・尿検査:肝機能,腎機能,電解質,血液ガス分析,血糖,一般尿検査,尿中β2MGをみる。
□骨年齢検査:幼児期では左手根骨X線検査,乳児期では大腿骨遠位端X線検査を行う。
□染色体検査:低身長のみを表現型とするターナー症候群(Turner syndrome:TS)を鑑別するために,女児では必ず行う。男児でも,発達遅滞,特異顔貌,小奇形があるときは実施する。
□内分泌検査:①成長曲線や身体所見から成長ホルモン分泌不全性低身長(GH deficiency:GHD)を疑ったときはIGF-1,②甲状腺機能低下症を疑ったときはTSH,FT3,FT4,③思春期遅発症,TS,性腺機能低下症を疑ったときはLH,FSH,エストラジオール,テストステロン,を検査する。
□頭部MRI:成長曲線チャネルの急激な下方シフト,多飲・多尿,頭痛,嘔気・嘔吐,視力低下,視野狭窄などから脳腫瘍の可能性を疑ったときに実施する。また,周産期異常やGH以外の下垂体ホルモン分泌低下を伴ったときには,下垂体評価(下垂体の大きさ,下垂体茎の太さ,後葉の位置)で実施する。
□全身骨X線:四肢短縮あるいは体幹短縮など,プロポーションが通常と異なる場合に実施する。
□GH分泌刺激試験:GH分泌刺激試験は再現性に乏しく疑陽性も多いため,IGF-1値が低い,頭部MRI検査で異常がある,GH以外の下垂体ホルモン分泌低下を伴っているなど,GHDの可能性が高いと判断した症例に限って実施する。
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