□ライ症候群(Reye syndrome)とは,インフルエンザや水痘などのウイルス感染後に,急性脳浮腫によるけいれん,意識障害,脂肪肝を伴う肝不全,高アンモニア血症などで死に至る疾患である。ミトコンドリア機能不全をきたすサリチル酸製剤との因果関係が指摘され,本剤が投与されなくなってから激減した。原則として,基礎疾患を有していない特発性のものを指す。
□一方,ライ"様"症候群(Reye-like syndrome)とは,一部の先天代謝異常症がライ症候群類似の急性発症を呈した状況を指す。ミトコンドリア異常症が代表的な基礎疾患であるが,尿素サイクル異常症,シトリン欠損症,脂肪酸代謝異常症,有機酸代謝異常症でもライ様症候群で急性発症することがある。後者の場合,二次的なミトコンドリア機能不全が生じていると推察される。過去にライ症候群と診断されている症例の中には,基礎疾患が診断されていない症例も存在する可能性がある。
□嘔吐,嗜眠,錯乱,けいれん,昏睡,出血傾向で発症する。心肺停止に至ることもある。
□血液生化学検査:AST・ALT・LDH・CK高度上昇,高アンモニア血症,PT・APTT低下,低血糖,代謝性アシドーシスを認める。強い肝不全にもかかわらず黄疸は軽微なことが多く,ライ様症候群の特徴の1つである。
□腹部CT,腹部超音波:脂肪肝の所見を認める。肝生検が施行された場合も同様に肝細胞に脂肪沈着を認め,電顕でミトコンドリアの変性を認める。
□頭部MRI:特にDWで白質の浮腫性変化を認めることが多い。基底核にリー症候群様の変化を認めることもある。
□ライ様症候群で重要なことは,基礎疾患の鑑別である。何よりも血糖,血液ガス,アンモニア,乳酸/ピルビン酸,血中/尿中ケトン体といった,first lineの検査が重要である。これらの検査を患者が発生した時点で24時間体制にて施行し,迅速に結果を得る必要がある。
□first lineの検査で異常があれば,さらにそれに合わせたsecond lineの検査として,血中アミノ酸分析,尿中有機酸分析,血中アシルカルニチン分析などを依頼する。ただし,これらの検査はすぐにオーダーできないことも多く,発症時の血清,尿,濾紙血をcritical sampleとして保存しておくことが重要である。
□ミトコンドリア異常症が疑われた場合は,酵素活性,遺伝子診断と診断を進めていく。他の疾患が疑われた場合も同様である。
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