□急性腎炎症候群(acute nephritic syndrome)は,急性に血尿,浮腫,高血圧を呈する疾患群の総称である。
□感染性のものが代表的であり,その中でも最も多いのが溶連菌感染後急性糸球体腎炎(acute post-streptococcal glomerulonephritis:APSGN)である。その他,心内膜炎,シャント感染,EBウイルス,パルボウイルス,B型肝炎ウイルス等によっても生じる。
□IgA腎症,紫斑病性腎炎(IgA血管炎),ループス腎炎,膜性増殖性糸球体腎炎,C3腎炎など,慢性糸球体腎炎の急性腎炎様発症のものも含む。
□APSGNの97%は衛生面の整っていない国で発症しており,発症頻度は10万人年に24.3回とされる。先進国ではこれより低く,10万人年に6回とされる1)。
□APSGNは溶連菌による咽頭炎から1~3週後,皮膚感染から3~6週後に起こる。
□APSGNの病態として,NAPlr(nephritis-associated plasmin receptor)やSPEB(streptococcal pyrogenic exotoxin B)といった溶連菌抗原が糸球体基底膜に沈着し,局所で免疫複合体を形成することで炎症が引き起こされるとする説が有力である。
□典型的には血尿(顕微鏡的血尿または肉眼的血尿),浮腫,高血圧を呈する。その他,乏尿,蛋白尿がみられる。腎機能は正常なものから高度に低下するものまで様々である。軽症例では顕微鏡的血尿のみにとどまる。
□高血圧に伴ってけいれんや意識障害を呈する場合があり,PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)と呼ばれる。
□尿検査:血尿・蛋白尿を認める。通常血尿が主体であるが,進行したものでは高度蛋白尿を認める場合もある。しばしば膿尿も認める。
□胸部X線で心拡大を,腹部超音波では下大静脈径の増大,呼吸性変動の消失を認める。これらは乏尿による循環血液量増加の所見である。
□血中尿素窒素,血清クレアチニンが様々な程度に上昇する。正常範囲内にとどまることもある。
□APSGNでは,血清補体価(主としてC3,CH50)の低下,ASO/ASKの上昇を認める。血清補体価は発症から4~8週で正常化する。
□APSGNで腎生検が必要になることは稀であるが,行った場合は管内の著明な細胞浸潤(主として好中球)を認める。重症例では半月体を呈することがある。蛍光抗体染色ではメサンギウム領域および係蹄壁へのIgGおよびC3の沈着がびまん性・顆粒状にみられる。電子顕微鏡では上皮下の沈着物(ハンプ)がみられ,急性糸球体腎炎に比較的特徴的な所見である。
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