□尿路感染症(urinary tract infection:UTI)は,尿路に細菌などの病原体が侵入して感染を起こす病態である。腎臓に感染を起こした上部UTI(腎盂腎炎)と,膀胱・尿道に感染を起こした下部UTI(膀胱炎・尿道炎)にわけられる。
□UTIは,呼吸器感染についで小児では2番目に多い感染症であり,発症頻度は男児で1.1~1.8%,女児で3.3~7.8%と報告されているが,生後3カ月までの児では男児に多く(女児の2~5倍),しばしば敗血症を合併している。2歳未満の小児でその臨床経過や臨床症状から診断のつかない熱性疾患の原因の5%以上がUTIである1)。
□UTIの症状は,感染部位(上部,下部),年齢によって異なる。
□上部UTIは,高熱,消化器症状(嘔吐,下痢)などの全身症状を伴い,年長児では側腹部痛や背部痛を訴えることもある。新生児期では症状は非特異的(活気低下,哺乳不良など)であり,発熱も明らかでないことがしばしばある。
□下部UTIは,発熱をきたす頻度は低く,排尿困難,排尿時痛,頻尿,下腹部痛などを認める1)。
□UTIの診断基準は,従来は尿の定量培養にて単一の菌が105/mL以上(膀胱穿刺での採尿では103/mL以上,カテーテル採尿であれば5×104/mL以上)認めるものとされてきたが1),2011年の米国小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)のガイドラインでは,白血球尿(>5 WBC/hpf)の存在に加えて,尿培養で単一菌が5×104CFU/mL以上とされた2)。
□尿検体の採取は,年長児では外陰部を洗浄・消毒後に中間尿を検体とする,いわゆるclean-catchという方法が一般的であるが,年少児ではこの方法は困難であるので,カテーテル採尿を行う。採尿パックを用いた尿培養では疑陽性率が85%と高いので,培養が陰性であったときのみ診断的価値がある。
□尿培養は結果を得るまでに時間を要するため,UTIの暫定診断は一般検尿での有意な白血球尿の存在によりなされることが多いが,真のUTIである率は77%であり,疑陽性率は11%である1)。
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