編著: | 寺尾 亨(厚木市立病院脳外科部長) |
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編著: | 金 景成(日本医科大学千葉北総病院脳神経センター講師) |
判型: | B5判 |
頁数: | 236頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2017年07月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-4630-3 |
版数: | 1 |
付録: | - |
近年、わが国では高齢化社会がすすみ、年齢を重ねることで出現する脊椎・脊髄の変性疾患によるしびれ・痛み患者が増加しています。
しかし、“しびれ・痛み”はあくまで主観論であり、客観的判断が困難であるため、診るのは大変です。さらに、NSAIDsが効かない場合、次にどのような薬を使えば良いのかわからない症例、画像的な評価で脊椎・脊髄疾患が否定された場合に次の検査および治療方針が認識されていない、手術を要するものがあるなど、診療や治療が難しいのが現状です。
本書は、そんな“しびれ・痛み”に悩んでいる実地医療の先生方に対して、どんな手段で治療するか、どう対応するかを知ってもらおうと、まとめあげました!
第1章 総 論
1 しびれ・痛みのメカニズムと神経障害性疼痛に対する脊髄刺激法
2 しびれ・痛みの病歴聴取と神経学的診察
3 しびれ外来のすすめ
4 しびれ・痛みの投薬治療─私の工夫
5 しびれ・痛みの漢方治療─私の工夫
第2章 上肢のしびれ
1 頸椎疾患由来の上肢のしびれ・痛み
2 絞扼性末梢神経疾患(手根管症候群)
3 絞扼性末梢神経疾患(肘部管症候群および胸郭出口症候群)
4 採血後に出現する上肢のしびれ─知っておきたい情報
第3章 下肢のしびれ
1 腰椎疾患由来の下肢のしびれ
2 絞扼性末梢神経障害による下肢のしびれ・痛み
3 腰椎周辺疾患による下肢のしびれ・痛み
第4章 日常診療で知っておくと役立つ生活習慣病によるしびれ
1 ニューロパチーによるしびれ
2 上肢のしびれ・痛みと虚血性心疾患
3 血行障害による下肢のしびれ・痛み(閉塞性動脈硬化症)
4 脳卒中後のしびれ・痛み
第5章 これだけは知っておきたい稀な脊髄疾患由来の手足のしびれ
1 脊髄腫瘍
2 脊髄血管奇形
第6章 しびれ・痛みと精神疾患
1 しびれ・痛みはなぜ苦しいのか?診療における精神医療の役割
2 総合病院精神科でのしびれ・痛み患者へのアプローチ
3 慢性痛に対する電気痙攣療法:その適応と考え方
序文
冒頭の緒言として,「“しびれ・痛み”を診るのは大変です」と言わせていただきます。なぜならば“しびれ・痛み”はあくまで主観論であり,客観的判断が困難であるからです。しびれ・痛みを訴える患者の中にはうつ病など心因的要因も混在しており,限られた診療時間の中でひたすら悲観的で自己中心な話を繰り返すため,聞いている医師の心が折れてしまうこともあるかと思います。また非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が効かない場合,次にどのような薬を使えば良いのかわからない症例も存在します。
近年,わが国では高齢化社会がすすみ,年齢を重ねることで出現する脊椎・脊髄の変性疾患によるしびれ・痛み患者が増加しています。ただしX線,CT,およびMRIなど画像的な評価で脊椎・脊髄疾患が否定された場合に,次の検査および治療方針が認識されていないのが現実です。
脊椎・脊髄疾患以外にもしびれ・痛みをきたす多くの疾患や病態が存在しており,その代表疾患は絞扼性末梢神経疾患によるものです。また,日常の診療の中では糖尿病の重症例や長年アルコールを多飲したことにより手足の末梢神経が損傷を受けることによる多発性末梢神経障害(polyneuropathy)などもしびれ・痛みの原因として多く散見されています。
最近になり,“しびれ・痛み”に対する薬が少しずつ開発され,投薬やブロック治療である程度はコントロールできるようになりました。それでも,保存的治療のみでは症状が残存し日常生活に支障をきたすならば手術を要する症例も存在します。
この度,実地医療の現場で活躍している医療スタッフの方々に対して,“しびれ・痛みとは何か”“しびれ・痛み患者をいかなる手段で治療するか”を啓蒙するため本書「外来で診る!手足のしびれ・痛み診療」を発刊いたしました。日常診療をもとに,医師と患者のやりとりを医学的な視点からのみならず心の治療の必要性にも目を向け,各専門の先生方にご執筆いただきました。執筆者の先生方にはご多忙の臨床業務の中,貴重なお時間を割いていただき厚く御礼申し上げます。本企画書が実地医療の場において“しびれ・痛み”患者の診察・治療に少しでも寄与・貢献できれば幸いです。
厚木市立病院脳神経外科 寺尾 亨
日本医科大学千葉北総病院脳神経外科 金 景成