手をついて転倒した際に,肘関節に後方への軸圧と回旋力が生じ,肘関節周囲の靱帯,関節包が破綻することにより後方への脱臼が生じる。靱帯付着部の剝離骨折や鉤状突起先端の骨折を伴うことが多い。橈骨頭骨折,肘頭骨折,鉤状突起3mm以上の骨折を伴う場合は,肘関節脱臼骨折として区別して取り扱う。
変形した肘の外観と疼痛による運動制限を特徴とする。単純X線で確定診断する。
非観血的脱臼整復と外固定,早期運動療法が基本である。非侵襲的な脱臼整復操作を行う。脱臼整復後に肘関節の不安定性を確認する。肘関節が安定していれば保存加療とする。1週間の外固定後に,装具を用いた可動域訓練を開始する。併せて疼痛管理と腫脹予防のための投薬加療を行う。
易脱臼性が残存する場合や単純X線にて腕尺関節に4mm以上の開大(drop sign)がみられる場合は,靱帯修復術を考慮する。また,アスリートや肉体労働者で早期復帰を希望する場合も手術加療の適応となる。
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