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脊髄腫瘍[私の治療]

No.5278 (2025年06月21日発行) P.48

大槻文悟 (京都大学大学院医学研究科整形外科学教室准教授)

登録日: 2025-06-18

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  • 脊柱管内に発生した腫瘍を脊髄腫瘍と総称し,腫瘍の局在により,硬膜外腫瘍と硬膜内腫瘍に,そして硬膜内腫瘍は硬膜内髄外腫瘍と髄内腫瘍に分類される。腫瘍の多くは硬膜や神経組織より発生する原発性のものが中心となるが,がんやリンパ腫などの転移性病変は常に考慮に入れなければならない。神経鞘腫などでは椎間孔から脊柱管外に発育するものがあり,そのような形態の腫瘍を砂時計腫と呼び,Eden分類1)が有名である。また,腰椎レベルの神経鞘腫のように馬尾神経に生じる腫瘍は馬尾腫瘍と総称される。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    症状がなく,MRI,CT画像や胸部X線写真などで偶発的に見つかることも多い。腰椎レベルに多い神経鞘腫は,腫瘍による周囲の馬尾神経の圧迫症状が出現することが多く,下肢痛や下肢のしびれがみられる。体動やくしゃみなどで症状が悪化することが多い。また,腫瘍の増大により,下肢筋力低下や膀胱直腸障害が出現することもある。腫瘍は頭尾側に移動することがあり,症状の急な悪化や寛解がみられることもある。腫瘍内出血でも急激な症状の悪化がみられることがあり,注意を要する。

    脊髄レベルでは脊髄の圧迫による上下肢の運動麻痺や知覚鈍麻などがみられる。脊髄中心部から発生する髄内腫瘍では,触覚や運動覚が保たれ,温痛覚が障害される解離性感覚障害が生じることがある。

    【画像診断】

    MRIによる画像診断が最も有用である。また,ガドリニウム造影MRIにより,神経鞘腫との鑑別が難しい粘液乳頭状上衣腫が,ある程度鑑別可能である2)。髄膜腫は石灰化病変が腫瘍内にみられることが多く,CT画像による診断が非常に有用である。神経鞘腫の石灰化も非常に稀だが報告されており,石灰化イコール髄膜腫ではないことに注意を要する。脊髄造影の診断的意義は少ない。

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