編: | 福島健介(北里大学医学部整形外科学 講師) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 382頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2021年12月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5897-9 |
版数: | 第1 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
スポーツ安全協会の要覧(2020-21年度)によれば,股関節は「下肢(その他)」に分類され,傷害部位別の事故発生割合は2.1%と報告されています。この報告に表れているように,股関節におけるスポーツ損傷は,言わばマイナー損傷とされ,これまでのスポーツ医学の教科書においても,その扱いは非常に小さいものであったように感じます。加えてわが国では,股関節疾患については,股関節外科医が治療の担い手となることが多く,その多くが主に人工関節手術を専門とする医師であり,スポーツの現場とは,色々な意 味で距離が生じているのが現状であろうと思います。
筆者は,股関節外科医としてトレーニングを積んでいた当時,上司の「股関節鏡をやりなさい」の一言で,2008年より股関節鏡視下手術を開始し,股関節のスポーツ診療に も積極的に携わってきました。そうした中で常に模索し,努めてきたのは,スポーツ整形外科医と言語と経験を共有していくこと,互いに知識と理解を深め,それを患者さんに還元していくことです。本書は,正にその趣旨を体現したものと自負しております。この貴重な機会をいただきました,吉本軌道氏をはじめとする日本医事新報社の方々に 深謝申し上げます。
今回,執筆をお願いしたのは,スポーツ診療の現場のみならず,アカデミックな活動をフロントラインで行っている先生方です。大変お忙しい中,知っておくべき知識と,臨床の現場で実際に必要となるスキルを,バランス良く詳細にご執筆いただきました。この場をお借りして深く御礼を申し上げます。医師だけではなく,股関節のスポーツ診療に関わる全ての方々に役立つ書籍になったと思います。個人的には,人工関節手術を志す若手の先生方にも是非読んでいただきたいと思います。1つの視点として持っておくべき知識が多く盛り込まれており,手術の成績向上にも必ずやつながると思います。
股関節は,生体において最も大きな荷重負荷を担う関節の1つであり,その損傷はスポーツ活動のみならず,日常生活動作にも多大な影響を及ぼします。把握されていない,治療に至っていない,あるいは保存療法という名の経過観察が行われている患者さんがまだ多くいらっしゃいます。本書が,そうした患者さんの助けとなりますよう,切に願っています。