著: | 大塚吉兵衛(日本大学教授) |
---|---|
著: | 安孫子宜光(日本大学教授) |
判型: | A4変型判 |
頁数: | 224頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2008年10月01日 |
ISBN: | 978-4-7849-3062-3 |
版数: | 第3版 |
付録: | - |
生命科学を学ぶ方々に人気のビジュアルテキスト
医学,歯学,薬学のジャンルを問わず,広く生命科学を学ぶ学生にとって,生命現象の仕組みを分子レベルで理解することは,今や必須条件となっています。
本書は,生命現象を維持している分子レベルのメカニズムを,全ページにわたってカラーイラストを駆使して解説しています。
従来の教科書のイメージを打ち破った,図解中心の楽しい本です。
Section 1 生体の組成
1 タンパク質を構成するアミノ酸
2 タンパク質の構造
3 タンパク質の消化吸収と代謝
4 糖質の構造
5 糖質の消化吸収と代謝
6 脂質の分類
7 脂質の消化吸収と代謝
Section 2 遺伝情報の発現と伝達
1 核酸;遺伝情報の担い手
2 ヌクレオソームとクロマチン
3 DNAの複製に必要な構造
4 DNAの複製
5 DNAの修復
6 RNAの合成とプロセシング
7 転写の調節
8 翻訳
Section 3 遺伝子工学
1 DNAの特異的切断,連結,複製,修飾などに用いる酵素
2 目的遺伝子を宿主細胞に運搬するクローニングベクター
3 ゲノムクローニングとcDNAクローニング
4 遺伝子・遺伝子産物の検出法
5 塩基配列の解読法
6 ポリメラーゼ連鎖反応
7 動物細胞への遺伝子導入
8 DNA診断
9 遺伝子治療
10 ヒトゲノム解析
11 ヒトゲノムプロジェクトでわかったこと
12 ゲノム機能科学
13 ゲノム創薬
Section 4 情報伝達系
1 情報伝達の基本システム
2 内分泌系と標的器官
3 ホルモン受容体
4 サイトカインの性状と分類
5 サイトカイン受容体
6 転写因子によるDNA認識の分子機構
7 接着斑型受容体
8 病原体認識受容体
9 レドックス制御と情報伝達
Section 5 生命科学
1 細胞周期とその調節因子
2 細胞死
3 アポトーシスの誘導機構
4 老化とその原因説
5 ストレスタンパク質と分子シャペロン
6 ユビキチンとプロテアソーム
7 初期胚の発生と幹細胞
8 核移植と再生医学
Section 6 感染・炎症・免疫
1 感染の成立
2 炎症反応機構
3 炎症のケミカルメディエーター
4 免疫担当細胞
5 免疫グロブリン
6 免疫反応機構
7 アレルギー
8 自己免疫疾患
9 歯周病と全身疾患
10 免疫不全
11 臓器移植と免疫抑制剤
Section 7 癌
1 癌遺伝子
2 癌抑制遺伝子
3 多段階発癌機構
4 癌の浸潤・転移
5 癌の分子標的治療
Section 8 結合組織
1 コラーゲンの化学組成と分子形態
2 コラーゲンの生合成
3 エラスチン
4 プロテオグリカン
5 糖タンパク質
6 フィブロネクチンとラミニン
7 マトリックス金属プロテアーゼ
Section 9 骨・軟骨
1 骨・軟骨の組成
2 骨・軟骨を構成する細胞
3 骨の形成
4 骨の吸収
5 骨のリモデリング
6 血清カルシウムの調節機構
7 代謝性骨疾患
Section 10 歯の生化学
1 硬組織の化学組成
2 エナメル質とセメント質の有機質成分
3 象牙質の有機質成分
4 歯の無機質成分
5 硬組織の石灰化
6 歯の形成
7 歯髄の化学組成
改訂版の刊行にあたって
本書の初版は1997年に出版され、幸いにも多くの読者の支持を得て、版を重ねてきた。ここに改訂第3版をお届けできるのは著者らの喜びとするところである。この間の生化学・分子生物学分野の進歩・発展を振り返ってみよう。
2001年にはヒトゲノムの全塩基配列の解読が終了した。これをもってゲノムプロジェクトが終了したといわれるが、単にゲノム配列を決定したにすぎず、ゲノム機能や役割、RNAおよびタンパク質の解明をめざす、ポストゲノム研究の時代に移行したといえる。そして、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームを包括したオーミクス(-omics = -ome + -ics)と呼ばれる網羅的解析を基盤とするバイオインフォーマティクス研究分野が確立されている。
一方、個々人の遺伝子の機能解析から、免疫システムや生体侵襲に対する感受性などが異なり、疾病に対するリスクは均一ではないことが明らかになった。そのため個人をゲノムレベルで認識し、個人に最も適した医療を施すオーダーメイド医療が求められるようになり、また、バイオインフォーマティクス研究を基盤にした遺伝子治療、ゲノム創薬などの開発が進展している。
2007年には日本人研究者によってヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)が樹立され、世界に大きなインパクトを与えた。これは、従来の初期胚を用いた胚性幹細胞において避けがたい壁となっていた倫理的問題と拒絶反応をクリアするものであり、幹細胞を用いた再生医療の実現が視野に入ってきた。
これらの状況をふまえて、本書をさらに充実させるべく見直しを行い、第3版を上梓することとした。医学・歯学・薬学分野の学生のためにお役に立てれば幸いである。
2008年9月
著者ら
初版のはしがき
生化学・分子生物学の最新の情報は日常的にあらゆるメディアを通して紹介され、生命現象を理解するためだけでなく、癌や難病の実体を解明するうえでも、その学問的な役割に関心が高まっている。いまや高等生物から微生物、ウイルスに至るまで生物のもつ化学反応が、有用な研究手段として多くの研究分野で応用されるようになってきている。特に医歯薬系の学生にとっては、これらの情報を単に知識の断片として記憶するだけでは不十分であり、生体内の生命現象や代謝過程がいかに精巧に調節されているかを理解し、その必然性と巧妙さ不可思議さに感動する感受性を養うことが大切である。
生化学・分子生物学で学ぶ対象は分子レベルであり、分子の構造とそれらどうしの作用機構を多次元的にイメージできなければ生命現象を真に理解することは難しい。そこで本書では記載的な文章をできるだけ簡略化してビジュアルなイラストを多く盛り込み、実験データなども加えて理解を深められるようにした。近年明らかになってきた細胞や組織における種々の生命現象の仕組みについて、分子の世界でイメージをふくらませ、楽しみながら学んでいただければ幸いである。
本書の出版は、日本医事新報社の編集スタッフの助言、イラスト作成などのサポートがなければ完成できなかったであろう。スタッフの本書完成への情熱と忍耐に敬意を表したい。また、多大な協力を戴いた前野正夫助教授、イラスト作成を手伝って戴いた細谷史規博士に感謝いたします。
1997年5月
著者ら
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。