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「誰がやってよいと決めるのか、そもそもやるべきか」[お茶の水だより]

No.4854 (2017年05月06日発行) P.18

登録日: 2017-05-01

最終更新日: 2017-05-01

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▶ゲノム配列中の任意の箇所を改変できるゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」。その開発者であるエマニュエル・シャルパンティエ、ジェニファー・ダウドナ両博士が日本国際賞を受賞し、来日した。4月20日、東京大学で行われた記念講演で、ダウドナ博士はヒト受精卵へのゲノム編集の実施について、「誰がやってよいと決めるのか、そもそもやるべきか、議論する必要がある」と語った。
▶CRISPR/Cas9は、従来のゲノム編集技術と比べて、改変に高度な技術が不要かつ低コストであり、臨床応用を目指した研究が世界各国で競うように行われている。中国では既に受精卵にゲノム編集を実施したとの報告が複数発表されている。
▶米科学アカデミーは2月、「重篤な遺伝子疾患」など複数の厳しい条件を付した上で、将来的に受精卵のゲノム編集が容認されうるとする報告書を公表。日本では、内閣府調査会が昨年4月、改変を施した受精卵を胎内移植する臨床利用は容認できないとしつつ、「胚の初期発生や発育における遺伝子の機構解明」に資する基礎的研究は容認されうるとの見解を示した。ただし現在、ゲノム編集を用いた研究を対象とした明確な規制はない。
▶厚生労働省は「遺伝子治療等臨床研究指針」を改正し、適用範囲にゲノム編集を含める方向で検討を始めた。しかし、同省は現時点で“現実性の高い”体細胞を改変する研究計画の提出に備える方針で、受精卵を改変する研究は検討対象外だ。
▶現在の日本には生殖補助医療の法規制もない。学会の基準だけでは、学会無所属の医療機関による「ゲノム編集不妊治療」を止められない。「誰がやってよいと決めるのか、そもそもやるべきか」。国は指針や審査体制の整備に本腰を入れるべきだ。

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