京大iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏は5月29日、日本医療研究開発機構(AMED)が開いたシンポジウムで講演し、iPS細胞を用いた研究によって治療薬の開発までにかかる時間やコストといった「医学研究が抱える課題の多くを解決できる」と期待を示した。
山中氏は1989年にウイルスが発見され、2014年に画期的な治療薬「ハーボニー」が発売されたC型肝炎を例に、「治らなかった病気が治るようになった。これが医学研究の力であり、私たちが目指していること」と強調。一方で、「治療薬の発売まで時間がかかることや、やっとできた治療薬が高額であることが医学研究の大きな課題」と指摘した。
その上で山中氏は、研究所で進めている再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトの現状について、日本赤十字社などの協力を得ながら、免疫の拒絶反応を起こしにくい特殊なHLA型を持つ「スーパードナー」をこれまでに10人以上発見したことを説明。そのうち2人から作製したiPS細胞で、「日本人の約4分の1に当たる3000万人をカバーできる」とし、スーパードナーのiPS細胞をストックしておくことで、医学研究にかかる時間やコストの削減につながると話した。