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脳梗塞の後遺症に劇的な効果がみられたMuse細胞とは?〜出澤真理(東北大院医学系研究科細胞組織学分野教授)【この人に聞きたい】

No.5092 (2021年11月27日発行) P.6

出澤真理 (東北大院医学系研究科細胞組織学分野教授)

登録日: 2021-11-25

最終更新日: 2021-11-24

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多能性幹細胞であるMuse細胞は血液中に入ると傷害がある組織へ集まり
必要な細胞に分化して様々な臓器の機能を修復する
Muse細胞治療が難病も含め多くの患者の福音になる可能性も

でざわ まり:1989年千葉大医学部卒業。95年同大院医学研究科博士課程修了。横浜市大解剖学第一講座講師、京都大院医学研究科助教授などを経て、2008年より現職。東北大医学系COEプログラム国際ネットワーク連携委員会委員長も兼任。2011年文部科学大臣賞受賞。

脳梗塞で重度の身体機能障害が残った患者にMuse(ミューズ)細胞製品を1回点滴投与しただけで、1年後に約7割が介助の必要のない状態になった─。そんな注目すべき研究結果が、今年5月に発表された。Museとはどんな細胞なのか。この細胞を発見した東北大学大学院医学系研究科細胞組織学分野教授の出澤真理氏に聞いた。

重度の脳梗塞後遺症患者の3割が職場復帰

─Muse細胞とは?

様々な細胞に分化して臓器や皮膚の機能を修復する多能性の幹細胞です。私たちの体にもともと備わっていて、日々傷ついている様々な臓器を修復して体の恒常性を保っています。

ドナー由来のMuse細胞を静脈内に点滴投与すると傷害組織に集積してその組織に応じた細胞にオンサイトで分化し、傷害を受けた細胞を置き換え、機能を修復します。

治験では、脳梗塞の発症後2~4週間後にmRS(modified Rank-ing Scale)が4か5の身体機能障害を有する患者さんにドナー由来のMuse細胞製品またはCL2020または偽薬が投与されました。脳梗塞で寝たきりか、歩行や身体的要求に介助が必要な患者さんを無作為に2群に分け、CL2020か偽薬を点滴で単回投与する、プラセボ対照二重盲検比較試験です。

その結果、投与から1年後に、Muse細胞製品投与群の68.2%(22例中15例)が、mRSが2以下、つまり、公共交通機関を介助なしに利用できる状態になりました。偽薬群は37.5%でした。さらに、Muse細胞製品投与を受けた患者さんの31.8%(22例中7例)が職場復帰(mRSが1)しています。これは偽薬群では認められませんでした。

─治験の結果を聞いた感想を聞かせてください。

動物では良い結果でもヒトには効かないというのはよくあることなので、本当に嬉しかったです。脳梗塞の後遺症を根本的に治す治療はこれまでなく、リハビリだけでは限界がありました。介護が必要になれば本人もつらいですし家族にも負担です。ドナー由来のMuse細胞製品を1回点滴投与するだけで、寝たきりだった人でも職場復帰し再び活躍するチャンスが得られるのは、非常に大きいことです。

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