厚生労働省は12日、ゲノム編集(用語解説)を用いた臨床研究を「遺伝子治療等研究指針」の適用範囲とする方針を示した。海外におけるゲノム編集の臨床応用の急速な進展を受け、国内での研究計画提出に備える。指針改正を視野に「遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」(委員長=山口照英日本薬科大客員教授)で検討し、年内にも議論を取りまとめる。
現行の指針は、遺伝子治療薬や遺伝子導入細胞の投与等を想定したもので、ゲノム編集については事実上規制がない。このため厚労省は専門委員会に、ゲノム編集を用いた治療等を「遺伝子治療等として指針の適用範囲とすべきではないか」と提案。適用範囲とする場合、①研究計画書の記載事項・内容、②倫理審査委員会の構成要件、③試料・情報の保管期間─などの検討を求めた。
ゲノム編集を巡っては、ヒト受精卵の遺伝子を改変し胎内移植することによる「デザイナーベビー」の誕生が懸念されている。政府の生命倫理専門調査会は昨年、基礎的研究の実施は容認しつつ、ヒト受精卵への応用については禁止する見解を示している。
これを踏まえ厚労省は、体細胞に対するゲノム編集による治療の研究計画が提出された場合の対応を念頭に置き、指針改正の検討を進めるとした。しかし、委員からは「生命倫理的観点から、予め大きな枠組みによる規制が必要だ」(松原洋一氏、国立成育医療研究センター)との声も上がった。